第46話 ※飛び降りても落下攻撃は出来ません

 獅子柄班が残していったマークを頼りに、捜索を続けていると。


 俺たちは巨大な窪み、十五~六棟のビルが纏めて下に沈んでいったことで出来たであろう”穴”に辿り着いた。


(恐らく、獅子柄班はこの下にいるな)


 本来であれば、敵やギミックを探知するジャックの能力により獅子柄班のメンバーはハズレ床を事前に回避することが出来るのだが。


 この異界域の楔の主ボスが居座るエリア一帯だけは”ビルの屋上全体がハズレ床”になっているため、一度足を踏み入れたら最後。


 魔方陣から伸びる蔦で拘束されてしまい、そのまま周囲のビル諸共沈んでいくことになるのだ。


 ジャックは、大蛇モードに戻ることで地面や空気の振動を全身でキャッチし探知を行うのだが。


 この異界域のビル群は、離れ小島のようになっているため。


 地続きの場所で探知を行うよりも狭い範囲のギミックしか炙り出せないのだ。


「この穴の手前で、目印が途切れているわね…」


「はい…」


「ぅあぅ~?? 」


「ここで目印が途絶えたことを考えると。 獅子柄班はこの下に……」


「沈んで行ったんでしょうか…」


「恐らく、ね」


「私たちも下に降りてみますか? 」


「そうね。 でも、その前にミツルちゃんたちと合流しましょう」


「…! 連絡が来たんですね…! 」


「ええ。 ビルが沈んでいった先で敵と遭遇したみたいだけど、無事に撃退して。 今、ブラウさんの能力でアイカさんと一緒に上に向ってるらしいわ」


「よかったぁ…」


「私たちが今いる場所の座標を、ミツルちゃんに送信して…と。 よし。 これでいいわね」


「アイたちが戻ったら、捜索再開ですね! 」


(戻ったら…か。 果たして、それで間に合うのか? )


 この異界域の楔の主は、獅子柄班との相性が最悪なのだ。


 本来であればこの場にいる筈のミツル先輩のセイン、ブラウのスキルが攻略のカギになっている。


(ここは実質、スキルの有用性とシナジー効果をユーザーに認識させるためのイベントバトルだからな…)


「っ……! 」


「ディンキーちゃん…? 」


「この下で、味方が戦ってるのです…! 」


(ディンキーがもつ、妖精の知らせが発動したか…! )


 妖精属性がもつ固有スキル、妖精の知らせは。


 一定範囲内で戦闘が行われている場所をマップ上に表示し、さらにその戦闘に参加している味方キャラクターに限り体力の減少状況が分かるという効果内容になっている。


「状況は…? 」


「だいぶ消耗している子もいるのですよ…! 今すぐ援護に向かわないとなのです…! 」


「マイさん…! どうしましょう…! 」


「……っ」


(まあ…マイさんからすれば迷う状況だよな)


 戦闘力は新東都女学園でもトップレベルの獅子柄班が苦戦している相手なのだ。


 マイさんだけならともかく、新人であるミサキがいるこの状況で援護に向うのを躊躇する気持ちは理解できる。


「マイ…! 迷ってる場合じゃないの…! 急がないと危ないの…! 」


「でも…! 」


「■■ゥゥ」


(ミサキ、助けに向おう)


「エデン…? 」


「■■ァ、■■■■ゥゥ」


(大丈夫、俺たちならやれる。 信じてくれ)


「…………うん。 やろう、エデン! 」


「ミサキさん…? 」


「■■ゥゥ…! 」


(行くぞッ! )


 マイさんには悪いが、ディンキーが言う通り迷ってる時間はない。


 俺はミサキを抱えたまま、ビルの柵を飛び越えた。


(今の力じゃ、俺だけでここの楔の主を倒すのは厳しい……だが)


 この下にはジャックが、俺と同じSSSランクのデモンがいる。


(ここでの戦いで大事なのは、そう)


 ジャックの超火力攻撃を、敵に通るようにすることなのだ。


(そのためのスキルが、俺にはある)


 それもそのはず。


 エデンとジャックの組み合わせは対人勢なら誰もが知る、物理攻撃軸のパーティー、いわゆる物理パのテンプレであり。


 つまりは、俺たちが場に揃えばそれだけで。


(最強なんだよなァ!! )


 両足から地面に、突き刺さるように。


 土埃を巻き上げ、ド派手な着地をキメる。


「■■ァァァ!!! 」


「っ……上から!? 」


「こんな時に…! 新手ですか!? 」


「いや、違うなァ。 コイツぁ…! 」


「ジャック…? 」


「オレっちの、筋肉が告げてるッ! コイツぁ、オレっちのマッスルフレンド、最高のマッスルフレンドだッ!! 」


「■、■■ゥゥ! 」


(いや、マッスルフレンドってなんだよ!! )

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