第36話 お口にチャック

(スミマルCの攻略、いよいよ始まるのか…)


 先程、盟友界にいた俺たちはミサキとアイカに召喚され。


 冬葉原に出現した異界域の攻略チームに組み込まれ、早ければ今日の夕方にも突入するといった内容の説明を受けた。


(この辺りまでは大まかな内容ストーリーを記憶しているんだが…ミサキに事前に伝えることはできないだろうな…)


 ミサキと契約を結び、会話を重ねていくにつれ。


 俺は、何らかの条件でミサキとの会話に制限が掛けられていることに気付いた。


 幻異武装の集め方や、仮想異界域で楔の主を務めたデモンの情報など。


 制限を受けてる内容の話を俺がしようとすると、ミサキには唸り声や叫び声をあげてるように聞こえるらしい。


(……だがまあ、敵の情報は俺が理解しているだけでもだいぶ優位に立てるわけだし。 女主人公のストーリーにいたってはほぼ初見プレイに近い。 本来なら”いない”はずのミサキも加わったこの状況で…アダムスコードの知識を仮に全て伝えられたとしても、思った通りに事が運ぶとは限らないよな)


 主人公、立花アイカが参加する事になる最川・支援回収班も本来この時点では三人だけのチームの筈なのだ。


 すでに原作崩壊がはじまっている以上”この先○○が起こる”といった情報は余計な先入観を与えるだけになりかねない。


「■■ゥゥ…」


(ファーストチームを務める獅子柄・先行排除班が九時半ごろ現場に到着し異界域へ突入済み…)


 ここまでは俺の記憶と合致している。


 この先、シナリオ通りに事が進むのなら。


(班長、獅子柄アミ率いるファーストチームは十八時過ぎにスミマルCを繋ぎ止めていた”楔の主を撃破”する。 そして――)


 落ちる。


 落ちて、落ちて。


 落ちた先で、本当の攻略が始まるのだ。

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