(NEW)第24話 バトルスピード? 関係ねぇ! 俺たちが先攻だ!!
― バトルスピード算出。 敗北。 スキルの発動を確認。 先攻を奪取しました ―
「えっ? 」
召喚デバイスから流れた耳を疑うようなアナウンスを聞き、思わず漏れた言葉がリリーナさんと被ってしまう。
(スピード勝負では私たちが負けたんだよね…? )
先手後手を決めるバトルスピード。
この値がリリーナさんよりも遅い時点で私たちが後攻になるはずなんだけど……戦闘が始まるのと同時にエデンが持つスキルが自動で発動してどういうわけか先攻を取れてしまった。
「くっ…! なによ、コレ…! 」
不思議なことはまだ続くようで。
リリーナさんからエデンに向ってキラキラした光の粒子が流れていくと、さっきまであんなに元気そうだったリリーナさんが突然胸を押さえて苦しそうな顔をしていた。
「■■ゥ…」
(ミサキ、始めるぞ)
「う、うん! おっけーいくよ! 」
― コマンド承認 ―
先攻が取れたことといい急に苦しそうになったリリーナさんといい…気になることはたくさんあるけど、今はとにかくこの戦いに集中しなくちゃっ!
◇◆◇
アダムスコードにおいてリリーナというキャラは純粋なHP回復能力だけで考えれば、ヒーラーの中でも最高峰に位置していた。
通常攻撃を行うだけで自身にHPの継続回復効果を付与することができるパッシブスキル。
状態異常を解除しながら継続回復効果を付与する魔法系スキルや、仲間全体のHPを大きく回復した後さらに継続回復効果を付与する魔法系スキルと。
リリーナはとにかく継続回復効果の付与を得意としている。
アダムスコードでは、別のタイミングで付与された継続回復効果はアイコンが分けられ別の回復として扱われるため。
たとえば継続回復が三回付与された場合、継続回復1、継続回復2、継続回復3の順番で順次発動していく。
そのため継続回復の重ね掛けは非常に強力であり、リリーナのように様々な手段で継続回復を付与できるキャラがパーティーにいるだけでグッとパーティー全体の耐久力が上がるのだ。
「■■ゥ…」
(だが…)
俺のような”回復メタ”のスキルを持つキャラがいる場合は話が別だ。
― コマンド承認 ―
「■■■ァァァァ!! 」
ミサキからの指示を受け、俺は物理系攻撃スキル”あらゆる生命への暴虐”を発動する。
戦闘の開幕、死滅の来訪者の効果によりリリーナからHPと共に闘気と魔力を吸収したため発動コストの重いこのスキルも最初から発動可能になっていた。
「うそっ…! 避けられないッ…!! 」
魔剣から放たれる七発の剣圧を、たったの一度も避けられなかったリリーナの顔に困惑の表情が浮かぶ。
(悪いが、ソイツは避けられねぇぜ)
俺が持つ全ての物理系スキルは、相手の回避力を無視して必中する”回避不能効果”と。
物理ダメージ無効化・物理ダメージ吸収回復・物理ダメージ反射反撃といったあらゆる物理ダメージ耐性を貫通してダメージを与えることができる”耐性無視効果”。
この二つが同時に付与されているのだ。
例外として、防御ステータス内にある物理防御力によるダメージ軽減は俺の能力で無効化することは出来ないので単純に防御力が高い相手に対しては別の対策を用意しなければならないのだが……。
「何これ…っ。 体から力が…」
あらゆる生命への暴虐は単純な七連続の物理攻撃というわけではなく、攻撃が命中した相手の最大HPを一割(重ね掛けで最大四割まで)低下させることが出来る。
最大HPの低下は元々のHPが大きければ大きいほど効果は絶大だが、状態異常回復の魔法で解除する事が可能だ。
(だからそう、リリーナは必ず解除してくるはずだ)
「うにゃぁ…! あにゃしだってやってやるにゃー!! 」
ボフッ、と。
メアリーの口から飛び出した小さな火球がリリーナに命中する。
(ナイス! )
魔法防御力が高いリリーナからすればレベルが低いメアリーの炎など蚊に刺された程度の感覚だろうが、火球の追加効果である”火傷”は固定ダメージのためこれも早めに解除しておきたいはずだ。
(よし! これで、ほぼほぼ行動を確定させられたか…? )
「あぅぅ…」
ティアが最後に、防御系スキルである液状化を発動し俺たちのターンが終了する。
「よくもやってくれたわねっ…! このっ!! 」
「うにゃあっ…! 」
闘気と魔力を俺に吸収されたことで、最初のターンは通常攻撃しか行えないリリーナの拳がメアリーを捉える。
「メアリーちゃんっ…! 」
「アイカ…ごめんにゃ…」
通常攻撃とはいえ、レベル差を考えればメアリーがリリーナの攻撃を耐え切れる筈もなく。
取引の発動により彼女は致命傷を受ける前に盟友界へと飛ばされてしまった。
(メアリー…)
早くも仲間が落とされ、残り二体となった俺たちだが。
(アンタが残した”火傷”のおかげで、俺たちの勝利が近づいたぜ…!)
逃れ得ぬ死。
魔界でそう呼ばれていた、死滅の騎士の力。
その一端が今、明かされようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。