第61話
自分ではもう二人の事は乗り越えたと思っていたが…いざ目の前に現れるのかと思うと体が震える。
幼い頃からのトラウマはそう簡単に消えるものではなかった。
「もちろん会わずにそのまま送り返すことは出来る…だが…ここで会ってかたをつける事も出来るのでは無いかと思っている」
「私…」
きっとあの二人を前にすると体が竦み言葉も出なくなる。
二人に詰め寄られると頷く事が当たり前になっていた。
「彼らはきっとロレッタにこの国に自分達を置いて欲しいと懇願するだろう…それをキッパリと跳ね除けられるか?」
「わ、分かりません…だってレミリアは妹だし、ジョージ王子は…こ、婚約者でしたから…」
「彼らが何をしてくれた?君から婚約者を奪ってこの国に妹の代わりとして送り込んだのではないのか?」
フレッドの言葉にロレッタは驚き口を押さえる。
「な、なぜそれを…」
「すまないね、こちらとしても来たのが君だったから調べさせてもらった」
「そ、それは…さぞガッカリしましたよね…」
ロレッタの顔がみるみると曇っていく。
レミリアやジョージ王子の名前に昔の自分が戻ってきてしまったように…
「いや、私は送り込まれたのが君で本当に良かったと思っている。こればっかりはあの二人に感謝だな」
フレッドは可笑しそうに笑った。
「良かった?」
「ああ、あの国が君の妹のせいで傾きかけていたのは知っていた。だからこそ妹をこちらで管理して国の建て直しに協力しようかと思っていたが…それをまさか元婚約者と姉の君に擦り付けるとは…本当に血が繋がってるのか?」
フレッドは不思議そうにロレッタに聞く。
「ふっ、ふふ…」
フレッドの真剣な疑問にロレッタは思わず笑ってしまった。
「いまとなってはわかりません。私はあの家で本当に疎まれていたので…」
何だかここでの生活が幸せであの家の事が少し昔に感じた。
「そう、その笑顔だ。私はあの妹出なく君が来てくれて本当に幸せだ、君のおかげで気づけなかった気持ちにも気づけた」
「気持ち?」
「一人の女性を愛する気持ち、大切な人を自分よりも幸せにしたいと思う事…」
フレッドは熱い眼差しでロレッタを見つめる。
「だからこそ、君の中で残るその悪意を消してあげたい…でもそれは私一人では無理だ。君が勇気を出さなければ…」
悪意と聞いてロレッタは胸を押さえた。
確かに少し薄れていた気持ちなのに二人の名前を聞いただけでこんなにも動揺している。
きっと自分でけじめをつけなければこの気持ちはずっと続くのかもしれない。
「もちろん、君にあいつらをずっと会わせない事だって出来る。だがそれでは本当の解決にはならないと思うんだ」
ロレッタはフレッド様を見上げると、その顔は不安そうに見えた。
その顔にふっと心が軽くなる。
「ふふ、なんでフレッド様の方が泣きそうな顔をしているんですか?」
「そ、それは・・・・・・君の為と言いながら本当は君を傷つけてしまうのでは無いかと、怖いんだ」
ロレッタはフレッド王子の意外な一面に驚きを隠せなかった。
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