第64話 パウンドvsメカパウンド?

 モフモフ島でのんびりしていると、ノックス中尉がやってきた。


相棒パウンド、大変申し訳ないが、今後のバージョンアップのためにメカパウンドと戦ってくれないか?」


 メカパウンドと戦う?!

 ノックス中尉は、何を言っているんだ。僕らは全然、戦いたくない。


【戦うんですか】


 僕らは頭をだらんと下げ、尻尾の先まで力を抜き、全身を使って嫌そうに返事をした。

 ノックス中尉に嫌そうなのが伝わった。


相棒パウンド、もの凄く嫌そうだな。まあ、そう邪険にするなよ。勝ったら酒をやろう」


【やりましょう】


 そうして、僕らはメカパウンドと戦うことになった。


「相手はメカパウンド1番機だ。すでに色違いの3番機と4番機が完成しているから、遠慮なくやっていいぞ」


 知らない間にメカパウンド3番機と4番機が完成していた。どれだけ経済力と工業力がある国なんだ。恐ろしい。

 仲良くしてくれて本当に良かった。


 指定された対戦日に僕らは身体測定を行った無人島へ向かう。

 上陸すると、身体測定用の機械は撤収され、対戦相手のメカパウンドが立っていた。

 今日もキラキラしていてカッコいい。


 ---------------うーん、勝てるのかなぁ。


《どうでしょうね》


 基本的にルール無用のデスマッチということだが、ギブアップの際は『グルグガガアアン!』(やめなさい)と言えば良いことになっている。

 もっとも、いくらメカパウンドのレーンガンの威力があるといっても僕らが殺されてしまうことは考えられない。

 その点は安心だ。


 ノックス中尉の合図でメカパウンドとの戦いが始まった。


 ---------------ニノ、頑張ろうね。


《はい。頑張りましょう》


 ---------------やっぱり尻尾の炎が当てやすいかな。


《そうですね、いきますか》


 ---------------そうだね、いってみよう。


 僕らは尻尾の先をチラッと動かす。

 それを見たメカパウンドはすぐに横に移動する。

 まだ尻尾の先をほんのちょっと動かしただけなのに予測されたのか。

 これはダメだ。


 ---------------ツノ攻撃にしようか。


《そうですね》


 僕らはツノ攻撃をしようと、メカパウンドの方をチラッと見る。

 その僕らの動きを見たメカパウンドは、すぐに横へ移動する。

 何故わかったのか。僕らにも気づいていない癖でもあるのだろうか。予測するにも程がある。


 メカパウンドは、レーンガンをバンバン撃ってくる。

 進化した身体でも避けられないし、かなり痛い。

 僕らも対抗して何かしようとするのだが、全て予測されてどうにもならない。


 ---------------ニノ、これは無理だね。負けを認めよう。


《悔しいですね》


 僕らは負けを認めて、ギブアップした。


『グルグガガアアン!』(やめなさい、ギブアップ)


 僕らはあっさりと負けた。



 ◇



 ---------------ニノ、このままでは終われないね。


《はい、そうですね。勝ちたいです》


 ---------------よし、リベンジしよう。その為には特訓だ。


 僕らは、メカパウンドに近づくことも出来なかった。そんなメカパウンドに対抗するために、まずは遠距離攻撃を身に付けたい。

 そこで、今は尻尾の先からボワワワワっと出ている炎を短く噴射し、火球として発射する練習だ。やったことがなかったので難しかったが、何とか出来るようになってきた。

 威力はないが、メカパウンドには有効だろう。


 それともう一つは煙幕だ。尻尾から炎ではなく、煙を出す。

 そもそもどういう原理で炎が出るのかさっぱり分からないのだが、とにかく何かのエネルギーを不完全燃焼させてモクモクと煙を発生させる。気合いで色々と出し方を試していたら出来るようになってきた。

 この煙幕により相手の目を奪ってメカパウンドに動きを読ませず勝機を作る。


 ---------------よし、この2つの新技でリベンジしよう。


《はい! 頑張りましょう!》


 そして、メカパウンドと再試合の日がやって来た。

 僕らはさっそく新技の煙幕を発生させる。僕ら自身も何も見えなくなってしまったが、構わない。

 何も見えないまま上空にいるであろう専用ドローンに向かって尻尾から小さな火球を発射する。

 対空砲火のように細かく連射。弾幕を張る。


 ババババッ! ババババッ!


 僕らは新技2つにより専用ドローンを撃ち落とすことに成功した。我、奇襲に成功せり。

 煙幕が晴れていく。専用ドローンという眼を奪われたメカパウンドは動きが鈍い。メカパウンドのデータにない僕らの火球が、動きの鈍いメカパウンドへ面白いように命中する。

 そこで、メカパウンドのスピーカーから音声が発せられた。


『グルグガガアアン!』(やめなさい、ギブアップ)


 メカパウンドがギブアップした。今回は僕らの勝利、リベンジに成功した。これで1勝1敗の五分になった。


 次に対戦するとしたらメカパウンドは煙幕と対空砲火に対抗した新装備でくるだろう。僕らはもう戦いたくない。

 ということで、ノックス中尉に気持ちを伝える。


【1勝1敗の引き分けで】


 兵器開発部も十分にデータが取れたということで、次戦は無しに決定した。メカパウンドの戦いは、ドローに終わった。





 今回のvsメカパウンドなど、ジャピア王国での暗黒巨大生物戦の後も色々なことがあった。こき使われているなと感じることもあるにはあったが、僕らは毎日のんびりと楽しく過ごしていた。しかし、そんな平和な日々も徐々に終わりが近づいていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る