その5
初航海の為に来訪したマキオとサキオ達は、1週間、王都でだらっと過ごした。
そして、その後、王都駐留艦隊の5隻と共に、演習と称して出港していった。
これは海賊退治に対するカモフラージュである事は言うまでもなかった。
洋上の総旗艦上で、作戦会議が行われていた。
会議は諸将がエリオに質問するという形で、作戦が形成されていった。
「オーイット、総参謀長の地位がいよいよ危なくなってきたな」
会議後、部屋にに残ったサリオは同じく残っていたオーイットに揶揄うように、そう話し掛けた。
「そうですな……」
オーイットは苦笑しながらそう言った。
それを見たサリオは何故か勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「しかし、閣下、地位が危ないのは閣下の方では御座いませんか?」
オーイットは笑みを浮かべたサリオを確認すると、不意打ちをするかのように、そう言った。
「えっ?」
サリオは案の定、笑みから一転して戸惑いの間抜けな顔になった。
「客観的事実を申し上げさせて頂ければ、最初から最後までエリオ様が主導なさっておりましたし、周りの者達もエリオ様に報告だけではなく、意見も具申していました」
今度はオーイットが勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「何を言っているんだ、俺はその場にいたぞ!」
サリオはやる方憤懣ないと言った感じで抗議した。
「ええ、いましたね。
でも、その場にいただけではありませんか!
皆はエリオ様だけに注目していました」
オーイットは更に追い打ちを掛けた。
「ぬぐぐっ……」
サリオは事実を指摘されたので、絶句する他なかったようだ。
それを見たオーイットはたわいもないと言った感じになっていた。
まあ、これ以上追い詰めるまでもないので、口には出さないでいたが……。
そんな2人のやり取りをやれやれといった感じで、マリオットは眺めていた。
「マリオット、お前はどう思う?」
サリオは突然マリオットに話を振ってきた。
疑問形ではあったが、父親の威厳が掛かった大事な質問である事は誰の目にも明らかだった。
そして、思った事を言わせない事もだ。
オーイットの方も鋭い眼光でマリオットを見ていた。
どちらの味方をしても、被弾する事は確実だった。
マリオットは溜息をつきたかったが、グッと飲み込んだ。
「両閣下とも、エリオ様の才能を活かす度量をお持ちで、ご立派だと思います」
マリオットはヌケヌケと2人を持ち上げる言動を口にした。
本心からそう言っている訳ではないのは明らかだった。
とは言え、そう言わないと自分に被害が及んでしまう。
まあ、本心からではないにしろ、そう言った気持ちがない訳でもなかった。
「……」
「……」
サリオとオーイットは、マリオットの言葉に顔を見合わせる他ないと言った感じで黙ってしまった。
しかし、冷静に考えてみれば、そう言った見方も出来なくはない。
そう感じると、2人は気まずそうな表情から一転して、笑顔で頷き合っていた。
以後、このマリオットの言葉からエリオへの丸投げが酷くなったのは言うまでもなかった。
まあ、それはともかくとして、15隻の艦隊は順調に海賊達の本拠地へと近付いていった。
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