その5
翌日、サラサはオーマと共に国防委員会に出席することとなった。
元老院の下には7つの常任委員会があり、それぞれがその分野に関する議論し、元老院に提案するものである。
元老院メンバーはいずれかの常任委員会に所属する事になる。
7つの委員会の力関係は平等と言いたい所だが、国防委員会だけは特別な委員会だった。
各常任委員会が2年ごとのくじ引きで決まり、3期以上連続でその委員会に所属することはゆるされない。
これに対し、国防委員会は海軍と各軍管区の司令官達、もしくはその代理をメンバーとして固定されており、別名6候会議とも呼ばれる。
まあ、軍の指揮権がない者がなっても仕方がない面もあるのだが、それ以上に特別視される理由がある。
それは国防を理由に、他の委員会の議論に介入することが出来る。
更に、国家の非常事態と判断された場合、国王の承認だけで元老院の採決を経ずに、提案を実行に移せるなどの特権的な地位を持っている。
しかも、国王の承認はほぼ形だけになっている。
オーマはその委員会のメンバーなので、委員会が開かれれば、出席するのは当然だった。
サラサの方は、今回の事案の当事者としての出席だった。
その2人に従うように、それぞれの参謀や副官も同行していた。
オーマとヘンデリックはそのまま会議室へ入っていったが、サラサとバンデリックは控え室で待つこととなった。
(やれやれ、やっぱり待たされることになるのね……)
サラサはそう思うと、椅子に腰掛けた。
国防委員会に出席するのは2度目だった。
前回は、サラサが成人式を終え、第2艦隊の司令官を拝命した時だった。
要するに、挨拶する為に出席したのだった。
サラサは何気なく、バンデリックを見た。
バンデリックは壁に沿って突っ立っていて、明らかに緊張している様子だった。
国防委員会に出席するのは、初めてであり、今回は報告書を読み上げる為に、サラサに同行する予定だった。
何時にない様子のバンデリックを見て、サラサはからかってやろうと思った。
(いつも、のほほんとしているのに、緊張する事もあるのね……)
サラサはそう思うと、可笑しく思ったが、からかうのは止めにした。
人には得手不得手というものがあるものだと感じたからだ。
とは言え、バンデリックはいつものほほんとしている訳では無く、どちらかと言うと、いつも心配しているように思える。
そう思うと、サラサの認識は周りとギャップがあるような気がする。
(お嬢様がやらかしたら、どうしよう……)
バンデリックはバンデリックで、予想通りの事を考えていた。
自分の事ではなく、サラサの心配をしていて緊張してしまう所が、らしいと言えばらしい。
ただ、この時は、そう考えている事をサラサに知られていない事は至福であると言えた。
……。
2人はその後、会話を交わす訳でもなく、沈黙のまま意外と待たされた。
こんこん。
「伯爵閣下をお呼びするように、仰せつかりました」
ノックの音が終わると同時に、扉の外からそう声を掛けられた。
「分かりました、すぐに行きます」
サラサはそう言うと、立ち上がった。
そして、扉の方へと歩き出した。
バンデリックは小走りで扉に近付くと、サラサの為に、扉を開けた。
と同時に、サラサは部屋の外へと出て行った。
バンデリックはサラサの後を追っていった。
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