その38

「損傷艦艇の修理、味方の兵の収容を急ぐように」

 エリオは溜息交じりだが、やや気落ちしながらそう言った。


 既にこの海域には敵はいなかった。


「残敵は掃討なさいますか?」

 マイルスターは質問してきた。


「抵抗する場合は掃討、しない場合は捕虜にして、後に、身代金と引き換えに解放せよ」

 エリオは戦いのルール通りの指示を出した。


「了解しました」

 シャルスは敬礼すると、伝令係の下へ走った。


(……)

 エリオはシャルスを見送った後、もう何も考えられなくなるほど、精神的に疲労していた。


 こうして戦いは終わったが、両軍共に損賠ばかり出して、何も得るものがなかった戦いであった。


 リーラン艦隊損害

 総旗艦艦隊10隻撃沈、ホルディム艦隊16隻撃沈

 計26隻撃沈

 ウサス・バルディオン艦隊損害

 旗艦艦隊11隻撃沈、ルドリフ艦隊10隻撃沈、オーマ艦隊2隻撃沈

 計23隻撃沈

 撃沈艦以外の損害は割愛。


(それにしても、クライセン家の惣領は本当にあっさりと戦死するのだな……)

 エリオはサリオの顔を思い浮かべながら悲しいはずなのだが、変な事を考えてしまっていた。


 色々な感情が整理できずに、こんな感情になってしまったのだろう。


 とは言え、サリオ・クライセンで16代目だったが、これで、16人中8人が戦死した事になった。

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