第14話 戦火は広がる
日本海軍が真珠湾基地の無力化・東南アジア資源地帯の確保へ向けて動き出した頃、ヨーロッパでも新たな戦端が開かれようとしていた。
ムッソリーニが再三に渡って主張し、戦線がヨーロッパ南北に広がる事を危惧したヒトラーによって反対されていた枢軸国軍のギリシャ侵攻が始まったのだ。
当時ギリシャは親英国として知られており、ギリシャと国境を接するアルバニアを併合したムッソリーニはこれを強く警戒していた。
既に北の隣国ユーゴスラビアがドイツ軍に占領されていた※こともあり、ギリシャはイギリスに代わりアメリカを頼るのか、枢軸側に付くのかを決めかねていた。結果的に、その判断の遅さが命取りとなってしまった。
イタリア軍の練度・装備の不足や北アフリカ上陸を見据えてドイツ側は慎重姿勢を取っていたのだが、対英戦に投入していた戦力を南に向けられるようになったドイツに余裕が生まれていたと言う訳である。
こうして12月8日、10個師団20万のイタリア軍と3個軍団のドイツ軍はアルバニア国境を越え、ギリシャへ侵攻を開始した。
当初ムッソリーニやイタリア軍の前線指揮官はギリシャ軍をかなり軽視していたのだが、オリンポスに代表される険しい山岳地帯が広がるギリシャでの侵攻作戦は容易ではない事に気付かされる。
加えて冬のギリシャは零下に冷え込み、充分な冬季装備を持たないイタリア兵を大きく苦しめる事となってしまった。
結果翌年2月には北西部イピロスの戦いでイタリア軍が敗退。
これに郷を煮やし、戦闘の長期化による北アフリカからの米英軍の介入を恐れたムッソリーニは指揮官をウバルド・ソッドゥ将軍へと更迭し、新たに6個師団を投入。
ドイツ軍も新たに3個軍団をユーゴスラビアから南下させ、ギリシャを東西から挟撃する形を取った。
これによりギリシャ軍は総崩れとなり、東から進撃するドイツ軍はギリシャ軍の補給拠点ヨアニナを攻略。勢いに乗って首都アテネに達し、4月23日、ドイツ・イタリア・ギリシャの各代表により休戦協定が締結された。
戦後ドイツは要衝アテネ、テッサロニキ、エーゲ海の島々等を、イタリアは国土の大部分に当たるギリシャ中央から西部を、ブルガリアはカバラ等東部を占領。
ギリシャ国王ゲオルギウス2世はクレタ島へ逃れていたが、5月20日にドイツ軍が多数の降下猟兵を投入しクレタ島へ侵攻。1週間の激しい戦闘の末にドイツ軍空挺部隊や山岳部隊は計3500以上の無視出来ない損害を被るも、同島の完全な制圧に成功した。
ドイツ軍の強襲を前に国王以下のギリシャ政府は英領エジプトへと逃れたが、今後もギリシャ国民による激しいゲリラ活動と抵抗は3カ国の占領地域で続く事となる。
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史実ではギリシャ・イタリア戦争よりも先に、対英戦を見据えたヒトラーがイタリアに英領エジプトへの攻撃要請を出しています。
ですが、この世界ではダンケルクの戦いに圧勝した事でドイツ側に多少の心理的・戦力的余裕が生まれており、北アフリカ戦線はまだ構築されていません。
※ヒトラーは開戦当初からハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、そしてユーゴスラヴィアに対し、四国同盟へ加わる様圧力を掛けていた。摂政パヴレ・カラジョルジェヴィチはこれに応じたが、反枢軸のセルビア民衆や軍部の反発を受けてクーデターが発生。国王ペータル2世による親政に移行するも、政治的混乱の隙を突いた40年4月上旬の枢軸国軍の侵攻により僅か11日で全土が陥落した。
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