第12話 動き出す米帝

1940年12月1日 ワシントンD.C.


「…………。つまり、イギリスの誇る主力艦の多くがヒトラーの手に渡った、と。」


「…大統領。残念ながら悪いニュースはまだ続きます。バトル・オブ・ブリテンの間様子を見ていたスペインが、本格的に軍を動かし始めたとの報告が入っています。」


スペイン内戦においてドイツ・イタリアの支援を受け、ファシズム独裁政権を打ち立てたスペイン国総統カウディーリョフランシスコ・フランコは当初から枢軸寄りの姿勢を見せていた。イタリア参戦後には中立を放棄し、枢軸側への情報提供等を行いながらもブリテン島での戦局を見極めていたのだが、ソ連の本格参戦に伴い遂に米英へ牙を剥く覚悟を決めたのだ。


「そうか…。ご苦労。それで、チャーチル首相。亡命政府にはどれだけのシーパワーが残されているんです。」


「元々エジプトやインドに駐留していた海外の小規模な艦隊、それとドイツに鹵獲される前にセイロンへ脱出させた東洋艦隊が少々…。」


「ここまで来て我関せずを通すのは向こうが許さないでしょう。もう出し惜しみはしません、が、リビア※に近いエジプトはどうなるか。」


「北アフリカの戦場は特殊だ。マルタやサハラの交易路をどう抑えるかでやりようはある。貴国の力を、どうかお借りしたい。」


「勿論です。これ以上、ファシズムの拡大を黙って見ているステイツではない。」






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※1934年に成立した、イタリア領トリポリタニアとイタリア領キレナイカの2地域を合わせたイタリア植民地。イギリス保護領エジプトやフランス領北アフリカと隣接する。

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