第11話 ブリテン不落神話の崩壊

「それでは、ハリファックス卿。他に何か言いたい事は?」


「…………。本当に、我がイギリス国民の身の安全は保証するのだな?」


「ああ、勿論。銃火器や艦船の引き渡しに素直に応じ、暗黒の大陸へ渡ろうなどと言う愚かな事を考えない限りは約束しよう。」



最後の抵抗拠点であったスコットランド北部・ハイランド地方の各地で敗北を重ねた大英帝国は11月29日、バッキンガム宮殿での対独講和会議を行った。


傀儡とは言えフィリップ・ペタン政権の樹立が認められたヴィシー・フランスと違い、ヒトラーは敗戦国イギリスによる自治を許さず、正規軍を完全に解体してしまった。


ドイツ本国と陸続きのフランスと違い、海を挟んだイギリス新政府の容認は危険との判断は当然であると言えよう。

降伏後、イギリスはイングランド帝国大管区、ウェールズ帝国大管区、スコットランド帝国大管区、北アイルランド帝国大管区の4州に分割された。


そして、旧イギリス軍の軍備を接収した事によりドイツ軍全体の戦力も大きく向上する事となったのだ。


まず大きいのはイギリス陸軍の保有する戦車の確保である。

ドイツ軍主力戦車としてフランス侵攻戦後に量産体制に入っていた4号戦車はコストパフォーマンスに優れるものの、同盟国ソ連のT-34やKV-1に比べると装甲・火力共に大きく遅れを取っていた。


そこで更に強力な前面装甲を有する5号戦車、通称"パンツァー"の開発を進めていたのだが、パンツァーは生産に多額のコストがかかってしまう。

陸軍上層部が戦車の生産体制に頭を悩ませる中で、A20重戦車や巡航戦車Mk.Iと言ったイギリスの主力戦車を装甲師団へ迎え入れる事に成功した意義は非常に大きかった。


そして最も大きいのは、自沈を阻止しドイツ艦隊に編入される事となった英本国艦隊、そう、大英帝国海軍ロイヤルネイビー主力の獲得である。

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