第6話 「朝まで焼き鳥大吾☀️」
その後の僕らの焼き鳥大吾での論議はこうだ。集まったのは、たかちゃん、たかちゃんの働くコンビニの新人店員の瞳ちゃん、俺、桃介、桃介のホスト仲間の正和くんの5人である。吉田ヒカルは来なかった。
酔いが回ってきた頃合いでフイに正和君がこんな事を言う。
「桃介さん、猫が迷い込んで帰って来ないなんて、普通はないんですよね」
「正和君、どういう意味?」
「いや、桃介さん、木村さん、ボカあ猫を飼ってましたから。いつも居なくなるけど、必ず翌日には戻りましたよ、帰巣本能があるから」
「さすがホスト兼、塾講師だね」
桃介が正和君を褒め称えた。正和君はさらに雄弁になる。
「だからですよ、詰まりは、誰かが捕まえて拉致しちゃったんですよ!それしかないですって」
ガチャン
正和君が、鼻息荒くしながら、生ビールジョッキ6杯目を飲み干し、テーブルに強くジョッキを叩きつけるように置きながら言い放った。
「正和君、飲みすぎじゃないか?ビール3杯以上は自己負担してくれよな。ホストは稼いでるんだろうし」
「そうなんですかねえ。僕は難しい話はわからないです。」
たかちゃんが遠慮気味に生搾りグレープフルーツサワーのコップの氷をカラカラ言わせながら呟いた。
「木村さん、やっぱりね、それだと思うわ!うん。私、わかるわ!わたし、わかるの!」
何故か、同僚たかちゃんの隣ではなく、僕の右隣に座っていた小麦色肌の健康美人、瞳ちゃんが至近距離から、ハーハー息を荒らげながら、何故にそんな自信満々なのか謎でしかないが、いきなり言い放った。
「そ、そうなの?つうか、瞳ちゃん近くない?普通は、そんな近くからレディは話さないぞ。距離感」
「瞳さんが言うとそんな気に思えてきますよね」たかちゃんが言う。
「そっすね、そしたら、連れ去った人をどうやって探すかですよ!!」
ガチャン。桃介もまた、烏龍茶のコップを強く置いてから、いつになくやる気を出す発言をする。なにしろ話を持ってきた桃介が最初から実は、何故かやる気ゼロだったのである。
「桃介さん、でも聞き込みは、意味なかったじゃないですか?」
正和君がもっともな事を言う。
「そうなんだよ、ビラも反応ないし。困ったなあ。俺はもう疲れたよ、わからん」俺は頭を抱える。
「諦めちゃ駄目ですよ先生。直ぐに諦めるんだから」
桃介がじんわりと俺を責めてくる。
「バカ!お前なんて最初から、やる気がないだろ。俺は全力一生懸命だから、消耗が激しいのだよ、他者理解ないなあ、全く」
「木村さんね、私思うんだけど(瞳ちゃんが小声になりながら言う)私ね、最近に猫を飼い始めた人が怪しいと思うの。ペットショップに餌を買いに来るようになった人とか」
また、瞳ちゃんが俺を見つめながら、さらに至近距離で言うのである。
一一一さっき近いと言ったのにな、瞳ちゃんの口と、俺の口が5センチくらいしか距離が無い。美幸が見たら俺は引っ叩かれるだろう。しかし俺は無理には拒まないのである。謎な美人である。
「ほ、ほう。ペットショップねえ…」
「先生、南口の郵便局の大通り沿いに大きなペットショップありますよね?」
「あそこの店長知ってるのか?店員にみかんちゃんって居たよね」
俺は、捜索においてどこか糸口が見えてきたような、そんな気持ちになっていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
翌日、美幸のアパートの窓からを眺めると朝から雨が静かに降っていた。灰色の雲と空。何か不安げな空気が充満するような朝だった。朝晩の寒暖差が近頃さらに激しく寒々しいのである。
朝一で俺は、東雲さんのガラホに朝の7時30分に電話した。高齢者は早起きである。
「さいですか。まだ探しようがあるんなら、あと1週間だけお願いします。すいませんね。本当に木村さん、吉田さんには感謝しますよ。ありがとねえ。確かに誰かのとこに居るかもしれないわねえ」
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