第25話 私とノブナガの初夜

「とうちゃーっく!!!ヒースロー空港ー!!!」


私たちは20時間のフライトを経てイギリスの地に降り立った。


「いやー、飛行機ってのはすごいな。知ってはいたが実際に乗ってみると想像以上だった!!」


ノブナガはイギリスの前に飛行機でかなりテンションが上がっていた。


「まあ飛行機ならこんな遠いところまで1日かからずに来れるもんね!」


「ああ、こんなものがあれば戦争の主戦場は空になるだろうな。もし戦国時代にこんなものがあったら1週間で天下統一できるな」


そっちか。もうこの天下取り脳め!でもそんなとこも好き。


私たちは電車に乗ってロンドンの中心部、ピカデリーサーカスへ向かう。この辺にホテルを取っているのだ。


ちなみに私は金持ちだからイギリスには幼いころから何度も来ている。ゆえに慣れたものだ。土地勘も結構ある。


スムーズにホテルのチェックインを済ませた私たちは早速観光に出かける。


でもホテルについた時にはもう夕方だったのでとりあえず夕飯だ。お腹空いた。機内食まずかったし。


でもロンドンと言えば世界一飯の不味い国として有名だ。食にこだわりがないから、かつて七つの海を制せたとも言われている。本当かどうかは知らんが。


それを知っている私はハズレなしの中華街にやってきていた。


「イギリスに来て早々中華かよ」


「ようく聞いて、ノブナガ。イギリスの料理は―


「まずいんだろ。ネットで調べて知っている」


「知ってたんかい!じゃあ文句言わないでよ!」


「早速イギリス感が無くなったから一応言ってみただけだ。別に文句はない」


「もう!ノブナガってば意地悪なんだから!!!」


私たちは高級中華料理を食べ、そのままパブになだれ込んだ。


ロンドンと言えばパブ。ロンドンの人間たちはパブで酒を飲みまくるのだ。


例に漏れず私たちも酒を飲みまくる予定。


実はつい先日20歳の誕生日を迎えたのだ。当日は実家に帰り家族で祝ったけど、ノブナガとは誕生会をやっていなかったからイギリス旅行は私のバースデーも兼ねているのだ。


そして今日初めてお酒を飲む私は酔うだろう。もちろんノブナガも。初めてのお酒はノブナガと飲もうと決めていた。


そうなるとこの後のことは火を見るより明らか。


酔って妖艶になる私。そして酔ったノブナガはまさに獣。私を前に我慢できるわけない。


そう、つまり今日私は純潔を散らすのだ。


ふふふふ。ハネムーンで子供出来ちゃうかも。


生まれてきた子供には「君はロンドンで仕込まれたんだよ」と言ってあげよう。


それじゃあ、ばっちこーい!!!





翌朝、私は裸で目覚めた。


ベッドは荒れており、それは昨晩の激しさを物語っていた。


・・・


と思う。


そんな気がする。


いや、そうに違いない。


何も覚えてないけど。


「おい、さっさと起きろ!早く行かないと朝食バイキング終わるぞ」


ノブナガが起こしに来た。


「昨日は激しかったようだね、ノブナガ。もしかして子供出来ちゃったかも」


「出来るわけねーだろ。酔っぱらって吐き散らかし、汚れた服を脱いで裸で寝てただけなんだから」


「え、マジ?」


「ゲロ臭い自分を見ればわかるだろ。さっさと風呂入ってこい」


・・・


私は黙ってお風呂に入った。


そして少し泣いた。


どうやら私は初めてのお酒でやり過ぎたらしい。


もうお酒は飲まないと誓った。


だがここで挫けてはいられない。


イギリス旅行はまだまだ続くのである。


とりあえず朝ご飯を食べた私たちはネットで調べた観光地を片っ端から回った。


タワー・ブリッジ、ロンドンアイ、ロンドン塔、大英博物館、ナショナルギャラリー。


まあ今日はこれぐらいで、残りは明日。


そして夕飯を済ませた私たちは、『信長の覇道』にダイブするのだった。もうそろそろ信長の禁断症状が出てきちゃうからね。天下取りしとかないと。





という訳で帰って来ました。戦国時代。


私たちがゲームから離れていた間に『信長の覇道』の世界では3カ月ほど経っていた。


ノブナガが指示した通りに国は動いていたようで、国は更に活気に満ちていた。


「お待ちしておりました、殿」


仙台城に帰って来た私たちを迎えたのは筆頭家臣の伊達政宗である。


何を言ってるかわからないと思う。


だって伊達政宗は首を刎ねられて死んだんだから。


だがノブナガは自分の上級職である『第六天魔王』の能力で伊達政宗を生き返らせていた。


これは『第六天魔王』の超強力スキル『魂の契約』の力である。


能力は『自ら討ち取った人間に対して、一度だけ蘇りのチャンスを与える』といったものだ。


ただこれには条件がある。


ノブナガに忠誠を誓うこと。それを拒否すれば蘇ることはできないし、忠誠を誓った後にノブナガを裏切れば、ぞの瞬間に再び死が訪れる。


伊達政宗はこれに了承して生き返ったのだ。ノブナガの配下として。


ちなみにこのスキルを得たのは伊達政宗を倒したその瞬間。


だから最上義光は死んだまま。


死んでから30分以内でないとこの能力は発動しない。


無理っぽいって思ってたんだけど、なんでか伊達政宗はノブナガに忠誠を誓った。


『魂の契約』にYESと答えたんだから裏切ることもできない。マジかよ。


でも蘇った後の伊達政宗はまるで別人だった。何だったらノブナガに忠誠を誓いすぎてて若干引くレベル。


「政宗、お前はウチの一番槍だ。任せられるか?」


「もちろんです」


「よし!もちろんウチの先陣を任せるんだから、負けたりなんかはしないよな?」


意地悪そうにノブナガが笑う。


「もちろんでございます。私は伊達政宗。殿の一番槍です」


伊達政宗が頭を下げる。


「いい返事だ、どこまでもついて来い」


「もちろん。地獄の底だろうがついて行きます。私がノブナガ様から離れることはありません。ノブナガ様こそ覚悟しておいてくださいね」


「覚悟なんて腐るほどしてる。じゃあ俺が天下を取ったその瞬間には絶対に俺の横にいろ」


「必ず」


めっちゃ忠臣って感じ。


とその時背後からどす黒いオーラを感じた。パプルである。


パプルの表情はなんというか途轍もなく気持ちの悪いものだった。感動しているような悔しいような。愛憎入り混じった表情と言ったほうがいいのかな。


まあよくわからないけどパプルがヤバい奴だということが確信に変わった。そして私の警戒心は何段階か引き上げられた。


ノブナガたちは上杉を攻めるための打ち合わせを始めた。


私はその辺よくわからないのでウヌちゃんと遊ぶ。


「ランお姉ちゃんは会議に参加しなくていいの?」


うぐっ!無邪気な顔して痛いところをついてくる。


「お姉ちゃんはノブナガの妻だからすでにすべてを聞かされてるんだ。だから今更会議に参加する必要なんてないのさ」


「そうなんだ~!ランお姉ちゃん凄いの!!!」


「でしょうでしょう!!!エッヘン!!!」


「今回はどんな作戦なの?」


「え?」


「どんな作戦なの?」


「・・・。・・・。・・・。」


「ん?お姉ちゃんどうしたの??」


「こ、今回の作戦は非常に複雑だからぁ、そのウヌちゃんには早いかなぁなんて思ったりしていてぇ、、、」


「ええ!!!ウヌも知りたいの!!!」


「うぐっ!ウヌちゃんこの作戦は子供が聞くと、、、」


「聞くと?」


「お、大人になれなくなってしまうんだよ!!!」


ボソッ「どんな作戦だよ」


「え?ウヌちゃんなんか言った?」


「ううん、何も言ってないの!ウヌ大人になれなくなるの嫌だからその作戦聞きたくないの!」


「あ、そう?」


「うん」


「そっかぁ、よかったぁ。じゃなくて本当は話してあげたかったんだけど、ごめんね!」


「全然大丈夫なの!遊ぼう、ランお姉ちゃん!」


私は窮地を乗り越えてお姉さんの威厳を保ち、ウヌちゃんと楽しく遊んだ。



「はぁはぁはぁ」


「はぁはぁはぁ」


私とウヌちゃんは自分の全てを出し切るまで遊び続けた。もう私たちには指一本動かす力も残されていなかった。


「はぁはぁ、ウヌちゃん、、はぁはぁはぁ、、た、楽しかったね!」


「はぁはぁはぁ、ら、ランお姉ちゃん。はぁはぁはぁ、い、いっぱい遊んで、、、はぁはぁ、、くれて、、あ、ありがとうなの」


「はぁはぁはぁ、お安いごっ、ごほっ!ごほっ!はぁはぁ、、お安い御用だよ」


「はぁはぁはぁ、、ま、また、一緒に、、あ、遊んで欲しいの」


「はぁはぁはぁ、お安いごっ、ごほっ!ごほっ!はぁはぁ、、お安い御用だよ」


私たちは仰向けに倒れながら楽しく会話をする。


「なんでお前らそんな状態になってるんだ?」


そんな私たちのところへ会議を終えたノブナガがやって来た。


「はぁはぁはぁ、、う、ウヌちゃんと、、た、楽しく、、はぁはぁ、、遊んでたのさ!」


「はぁはぁはぁ、ランお姉ちゃんに、、た、楽しく、、はぁはぁ、、遊んでもらってたの」


「、、、お前らの中での遊びって何なんだ?合戦終わりの歩兵たちよりも疲弊してるぞ」


「はぁはぁ、その通り。さすがノブナガ。遊びとは合戦なんだよ」


「??はぁはぁはぁ、、うん、遊びとは合戦なの」


「ウヌはよくわからないけど面倒くさくて乗っただろ」


「ち、違うの。遊びとは合戦なの。たぶん」


「まあいいや。早く回復しろ。上杉への出陣の日が決まったぞ。3カ月後だ」


「お、おお~!」


「お、おお~!なの~」


「大丈夫か?お前ら」


出陣の日、決まりました♡

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