5 次こそは
雨音。地面に叩きつける音の大きさから土砂降りだと予想する。
斎は顔だけ窓にむける。予想通り、大雨だった。
要目に担がれている途中、斎は気を失い、次に目覚めた時、窓際のベッドに寝かされていた。
斎が顔だけ動かして見ると、上半身のほとんどが包帯でぐるぐる巻きにされ、顔の左半分にも包帯が巻かれていた。服も清潔でゆったりしたものに変えられていた。
怪我からの回復は早かったが、後遺症がひどいのか、二日たった今も斎はベッドから起き上がれない。
要目はベッドの空いた場所に腰をかけ、白いハンカチを長方形に畳んでいた。そして畳んだハンカチをそっと斎のおでこに置く。
「ベランカ、逃がしました」
ベランカとの顛末は既に聞かされていた。斎が大男を倒したこと、そして要目がその場にいたベランカの部下をほぼ全滅に追いやったことなど。
「そもそも、奴に先を越された時点で私の負けでした。悠長に逆転の機会を伺っていたのが間違いでしたね。見つかった時点ですぐに逃げるべきでした……」
顔を動かせば白いハンカチを振り払えないことはないが、億劫なのでそのままにしておく。すると要目がハンカチの上から右手を置いてきた。
「こんなことに巻き込んでしまってごめんなさい、斎」
まさか謝罪されるとは思っていなかった。
斎はどう返答しようか悩んだが、何も言葉が出てこないので黙って過ごした。
「ですが、次は逃がしません。今度会った時は絶対にこの手で殺します」
要目の右手はギュッと握り締められていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます