第25話 快適か、無双か、どうなるエルドランダー
カレーを食べ終えた俺たちは次の話題に移る。
そう、ディアマンテスを倒した後にエルドランダーが言い出したクラスチェンジについてだ。
あらためてエルドランダーにクラスチェンジとは何か質問する。
『クラスチェンジはレベルアップとは根本的に異なります。レベルアップが性能を向上させるのに対して、クラスチェンジはパーツや機構そのものを変更し、キャンピングカーとは別次元のキャンピングカーになることです』
「キャンピングカーはであることには変わりないんだな。ん? だったら壊されたお前の窓なんかは」
『無論取り替えます。クラスチェンジ後の私は新品同然の姿になるでしょう』
エルドランダーの言葉を聞いてシンシアが喝采を上げる。
「良かったですわ〜! 窓ガラスが割れたままだと風や虫が入ってきますし一安心ですの!」
「たしかに。直してもらえるならいいじゃん。早速やってもらいなよ」
ランスロットも推してくる。
クラスチェンジねえ……
『マスターは気が進まないのですか?』
「いや、俺もやってもらうべきだと思う。実際、この世界でお前の修理は難しいからな。ボロボロのお前を乗り潰すつもりはないよ」
と口では言うものの少し寂しい感じはある。
買ってから数日しか経っていないが愛着の湧いた車が別の車になってしまうのは。
『ご安心ください。クラスチェンジしても私の意志は引き継がれますので』
「それは少し残念だな。もう少し素直で皮肉を言わない人格にバージョンアップされたら良かったのに」
『そんなこと言っておいて実際に私が消えたらマスター泣くでしょ? だから、この身果てる時までそばにいますよ』
ああ、そうだ。大丈夫だ。
もはやエルドランダーはただの車じゃない。
大切な仲間だ。
だから、ちょっとガワが変わったくらいで俺たちの関係性が変わるわけでもない。
「そうかい、そうかい。じゃあ、早速こき使ってやる。クラスチェンジしてくれ、エルドランダー」
『了解しました…………さて、ここで提案なのですがクラスチェンジには二種類の方針があります』
「二種類?」
『【快適化】と【無双化】の二種類です。【快適化】は居住性や生活機能の向上を目指します。それに伴ってレベルアップの際には生活レベルを上げる新装備の搭載が主となります。一方【無双化】は戦闘力の向上を目指します。キャンピングカーとしての居住性は維持しながら戦闘兵器としての進化をします』
また、すっげーゲーム臭いことしようとしてるな、コイツ。
スキルツリーの方向性を決めるみたいなもんか。
興味津々といった様子でランスロットが口を挟んでくる。
「へー! おもしろ! 俺なら快適一択だけどな! 今でさえ飯は食えるし寝れるし涼しくて過ごしやすい。これ以上ってことはお風呂がついたり、サロンみたいになったりするってことだろ?」
風呂か……確かに捨てがたい。
生活機能の向上を拡大解釈するなら家電製品とかが増設されることもあり得るか。
ドラム式洗濯機とか食洗機が使えるようになればもはや移動するマンションだ。
現代文明の恩恵を受けるなら間違いなく【快適化】だろう、
だけど————
「お待ちになって! 快適なことは魅力的ですが、すでにエルドランダーさんの住み心地は屋敷と遜色ありませんことよ。それよりも【無双化】して戦闘力を上げるべきですわ!」
シンシアがランスロットに反論する。
それはほぼ俺の意見の代弁でもあった。
この世界で生きていくには武力が必要不可欠だ。
金で用心棒を雇うこともできるだろうが、エルドランダーやシンシアの存在を不特定多数の人間に知られたくない。
エルドランダー自身が英国諜報員の専用車両みたいに戦闘機能を有してくれれば一番手っ取り早い。
アンゴカー……なんてな。
「悪いな、ランスロット。【無双化】を選択するぞ」
「いいや、シンシアの言うことはもっともだな。俺は少し間借りさせてもらうだけだし、所有者であるアンタが決めるべきことだよ」
と、快く譲ってくれた。
「エルドランダー! 【無双化】の方向でクラスチェンジだ!」
『了解しました。では、一旦車の外に出てください。中の荷物は置いたままで結構です』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます