第4話 からかわれる僕
エブリンが
「それにしても、スゴい事がおこったよ」
僕はさっきの事を思い返すと、顔がゆるむ。
エブリンは僕より弱いGマイナスなのに、たった一撃で念願の宿敵を沈めたんだ。
しかもその正体は、ゴブリンのネームドモンスターだなんて、衝撃どころの話じゃないよ!
「ワンちゃん、どうしたぎゃ?」
その問いに戸惑ってしまう。
「いまさらだけど、君って本当にゴブリンなの? どう見たって人間じゃないか。普通に
「うぎゃ?」と、キョトンとしている。
「しかも、従魔契約者が
「あんな美味しいご飯は初めてだったぎゃ」
マジマジと見ると、かわいく微笑み返してくる。
いきなりの展開に興奮して涙が……。それに手も震えているよ。
「うん、一生ついていくぎゃ。えへへ、はい、んーーーーっ」
エブリンは柔らかく笑い、目を閉じて寄ってくる。
『一生ついていく』か、なんて素敵な響きなんだ。も、もう一度聞きたい。
「本当に僕でいいの?」
「ワンちゃんだからいいんだぎゃ、んーーーーーーーーーっ」
嬉しい、僕はこの事を一生忘れないぞ。いや、忘れろって言われたって忘れられないよ。
「でも目を閉じて、どうしたの?」と、不思議に思い聞いてみた。
「キスしていいよ。身も心もご主人様のモノだぎゃ、んーーーーーーうっうん」
「バ、バ、バカな事をしないでよ!」
からかわれているのに、そんなセリフにもドギマギしちゃう。
自分でも顔が真っ赤になるのが分かるよ。
それに気づいたのか、エブリンは調子にのって更に寄ってきた。
「あわわわわ、えっとー、ま、待ちなよ」
「いひひ、それは無理。だってワンちゃん可愛いぎゃ」
年下にからかわれているよ……恥ずかしい。
でもこれからはこの子と一緒なんだ。
互いの関係を大切にしたいと思い、僕はキスの代わりに右手を差し出した。
「こ、これから……よろしくね」
うつむいて目を合わせられない。これが僕には精一杯だ。
「もう、こちらこそぎゃ!」
はじける声と握られる手で、上手くやっていけると確信したよ。
この反応に、僕はこの子の事をもっと知りたくなった。
「ところでエブリン。君ってネームドモンスターだよね。その名前って親につけてもらったの?」
「ぎゃ? エブリンは生まれた時からエブリンぎゃ。だから、とっても元気だぎゃ」
んん、ちょっと意味不明。これは理解するのに時間がかかりそうかな。
そう思っていると、逆にエブリンが質問をしてきた。
「ねぇねぇ、ワンちゃんのサポートって、何であんなに凄いのぎゃ?」
首をかしげ可愛らしく聞いてくる。
答えてあげたいけど、それは僕にも謎なんだ。
神スキルの効果で、他人より遥かに高いダメージは出せる。
しかし所詮はGマイナスの最底辺。いくら倍率がたかくても意味がない。
「あははっ、僕も知りたいよ。エブリンには心当たりはない?」
エブリンも腕をくんでいる。
「むーん、いくら考えても分かんないぎゃ」
全力で取りくんだせいか、目をまわしてふらついているよ。
「でもー、さっきのワンちゃんは格好よかったぎゃ。すっごく骨太で、見ていて安心できたぎゃよ」
「もう、やめてよ照れるじゃないか」
そこで何かが心に引っかった。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ……それかも!」
エブリンの一言でひらめいた。
それは僕の加護【ラケシスの寵愛】の中には勇気、不屈、博愛によりその範囲と効果を変動させるってある。
「つまり、諦めなかったから勝てたって事ぎゃ?」
エブリンは、指をクチビルにあてて首を傾げる。クッ、カワイイ。
「うん、それとエブリンの勇気が、超絶パワーになったんだよ!」
「おおおお、やっぱりぎゃ。あの時に感じた力は本物だったんぎゃ」
「うん、僕ら2人の絆が生んだ成果だよ」
「きゃーーーーーーー!」
この情報はこれから戦っていくのに、かなり役に立つモノだ。
「君が従魔になってくれなかったら、僕はどうなっていたんだろうね?」
と僕は少し呆れてしまった。
エブリンは最弱ながら、僕に有り余る幸せを与えてくれる存在だ。
この子なしでは、一生テイマーにはなれなかっただろう。
「最高だよエブリン、君に出会えて本当に良かったよ」
「その言葉も嬉しいけど、いまはナデナデがいいぎゃ」
と、モジモジしている。
「あはは、さっきのが気に入ったみたいだね」
「ぐぅ~~~~~~~~!」
またお腹の音。だったら、いまは別のご褒美かな。
「あはは、僕も腹ペコさ。山菜はいっぱいあることだし、焼いて食べようか?」
「うぎゃ」
なんてない光景、仲間と一緒に食事。でも、これを僕はどれほど望んだことか。うん、感無量だよ。
「ワンちゃん、早くはやくー」
ヨダレを垂らすエブリンがせっつく。
「うん、もう少しだから待っててね」
幸せな気持ちでとり分ける僕。
うん、誰かと楽しく食べるのって、嬉しいや。
「美味しそうぎゃ、いただきまーす?」
食べようとしたその時、エブリンが鼻をヒクヒクさせた。
「ワンちゃん、なんかとってもヤバい匂いが、近づいてくるぎゃ」
ひきつったエブリンの顔に僕は驚いた。
僕の幸運の女神が警戒しているんだ。もしかしたら本当にヤバイかもしれない。
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