第14話
***
テオジェンナがお茶会に備えて右往左往していた頃。
愛しの小石ちゃんことルクリュスはテオジェンナとは別の理由で頭を悩ませていた。
(あの女郎蜘蛛の娘……茶会で何か仕掛けてくるに違いない)
セシリアの目的はロミオだ。
茶会では必ずや距離を詰めてくるだろう。
「僕が兄さんを守らなくては……けれど、テオもいるとなると蜘蛛女にばかりかかずらってもいられないな」
ルクリュスがテオジェンナの前だと本性を表すことができないと踏んで、茶会に招いたのだろう。ルクリュスはチッと舌打ちをした。
「なめやがって……いいだろう。受けて立ってやるよ」
ルクリュス・ゴッドホーンは基本的に売られた喧嘩は買う主義である。
負けられない戦いが、始まろうとしていた。
***
そして、やってきたお茶会当日。
「とにかく余計なことはせずに普通にお茶を飲んで帰ってこい」と生徒会の面々に言われて送り出されたテオジェンナは、一階の茶会用スペースに向かった。
茶会用スペースは食堂の隣にある部屋で、事前に申請しておけば人数分の椅子とテーブルを用意してもらえる。
今日は他に茶会を開く生徒はいないのか、部屋にはテーブルが一つしかなかった。
「テオジェンナ様。ようこそお出でくださいました」
テーブルの前に立ち、茶器の準備をしていたセシリアが振り向いてにこっと笑った。
「ぐうっ、まぶしい!」
「テオジェンナ様?」
早速、可愛さの波動を浴びて足の力が抜けそうになるが、根性で踏ん張る。
本番(小石ちゃん)の前に倒されてどうする。
「大丈夫だ! 問題ない!」
「はあ……」
セシリアがことりと首を傾げた。
その時、テオジェンナの背後からルクリュスとロミオの声が聞こえてきた。
「あ、テオ!」
「よう。お招き感謝するぜ」
テオジェンナに駆け寄ってくるルクリュスと、セシリアに向けて二カッと快活に笑い手を振るロミオ。
テオジェンナとセシリアの胸は同時に撃ち抜かれた。
「うっ」
「くぅ……」
小石と岩石の先制攻撃に、恋する乙女二人はいともあっさりと陥落した。
(駆け寄ってくる小石ちゃん……健気! 尊い! 可愛さの塊! 神は何故こんな可愛い生き物をつくったのか!? 私への挑戦か!?)
(ロミオ様、やはり素敵だわ。ああ、そのたくましい腕に抱かれたい……)
身悶えするテオジェンナと、うっとり頬を染めるセシリア。
恋する乙女達の頭の中にいい感じにお花が咲き誇ったところで茶会が始められた。
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