第八話 まだ終わってないの。あなたの後ろにいるのよ
ガラガラ
私は四谷さんの家の扉を開いた。玄関で靴を脱ぐ。もう、足が痛くてしょうがなかった。
本当はすぐにしゃがみ込みたかったけど、他人の家だもの、さすがに遠慮する。
廊下を進んでいくと、まだ
それに、目玉だけの姿の四谷さんもいる。
「
そう伝えたものの、まともな反応はない。
ちょっとは喜んでくれてもいいんじゃないの。そう思ったけれど、二人から浴びせられた言葉はまるで別のものだった。
「ちょっと、なに連れてきちゃってるの!?」
キンキンとした目玉の四谷さんの声が響く。
なぜか慌てているようだ。
「え、えと、露木さんの切り札にしてる道具って何か残ってないのか? あ、あと一枚……。ってことは、空を歩ける靴だけか?」
寄見さんが私の残っているお札の数が残り一枚だというのを見て取り、そんなことを言う。
「そ、その靴で逃げることは……」
寄見さんが
「ダメよ。屋内で使えるような道具じゃないし、寄見さんを抱えて逃げるなんて、露木さんにはできない」
それを聞き、寄見さんはガクリと項垂れる。
空を飛ぶ靴? この人たちは何を言っているんだろう。
とりあえず、後ろから何かが来ているのだということはわかった。振り返ってみる。
奇怪なものがずりずりと近づいてきていた。それは壁のような動物のような何かだった。辺見の顔がついており、苦悶の表情でこちらににじり寄ってきている。
ああ、寄見さんは逃げられないものね。それで慌てていたのか。
「でも、これなら一網打尽なんじゃないの」
先ほどまでの辺見は妖怪なのかどうか、よくわからなかった。でも、この壁と融合した姿は、明らかに妖怪といっていいだろう。
なら、これだ。
お札の最後の一枚を開放する。槍が飛び出て、辺見に向かって飛んでいった。
妖怪を一撃で殺せるという槍だ。
――ぎいえええええええ
槍が辺見だかぬりかべだかの合成生物を貫いた。辺見は断末魔の雄たけびを上げ、まさに霧散というべきだろう、その異形の肉体が瞬く間に消えていった。
「え? なんで? 最後の切り札は空を歩く靴じゃなかったのか? え? だましたのか、我々を……? なぜ……?」
寄見さんの言うことは相変わらずよくわからない。
「バカな、理由がない……」
この人のことは放っておくことにして、私は目玉の四谷さんの方に振り返る。
「ねえ、これって私の勝ちでしょ。
私は会心の微笑みを見せた。
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