エピソード2 アーノルド

「メッサーくんか、そうだな。

頼むとしよう。

アーノルド、彼について行きなさい」

そう言われたので同い年くらいの人について行き、部屋に案内された。


「ここが今日、アーノルドくんが泊まる部屋だよ。

そこの椅子に座って」

「はい、わかりました」

テーブルを真ん中に椅子が二つあるのでまたその一つに座った。


「アーノルドくんワインいけるくち?」

「はいたまに父と呑んでます」

「そっか、この部屋にあるワインは好きに呑んでよ。魔道具でいい温度になってるから美味しいよ。

さて、これは君の分」

そう言ってワインが注がれたコップを俺に渡し反対側の椅子に座った。


「さてまずは自己紹介しよう。

僕の名前はメッサー・カラム。

今は侯爵家に養子になったから、

メッサー・ハウエル。

一応次期侯爵家ってとこかな」

「自分はアーノルドって名前です!

農家をやっています!」

名乗られたので名乗り返した。


「そんな敬語なんて良いよ、年齢も近そうだし、六年前なんて僕も平民だったんだよ」

「そうなんで、そうなの?」

「うん、商会でたくさん儲けたから国王から親に男爵を授かったんだ。

ちなみにカラム商会って名前だよ」

「えっそれって」

カラム商会、聞いた事がある。


「考えた通りさ、君の弟達が働く商会の名前だよ。

流石に侯爵家の子供達が変なところに就職しても困るからね。


じゃそろそろ本題に入ろうか。


まず初めにハウエル侯爵家には敵がいる。

エランド侯爵だ」

「敵ですか?しかも同じ侯爵なのに?」

疑問に思ったことを素直に聞いた。


「少し長くなるけど、ちゃんと聞いてね。


国の貴族って言っても派閥っていうものがある。

僕たちハウエル侯爵家が所属する国王派。

敵であるエランド侯爵家が所属する貴族派。

そして中立派。


特に国王派と貴族派は最近発言力は拮抗して、少しのバランスが崩れるだけでどちらかが有利になる。

つまり、ハウエル侯爵家の発言力が小さくなればその分、貴族派の発言力が強くなるってこと。


それだけじゃない。エランド侯爵は武の功績によりその地位にいるが、まだ足りたいとこの侯爵領を狙っている。

外部と内部。どちらの権力を手中に収め、さらなる権力を手にしようとしている。


ハウエル侯爵様が亡くなった後、エランド侯爵は、その発言力を活かし王にこう進言するだろう。


『ハウエル侯爵領には、亡くなった侯爵様と同じスキルが必要だと。

調べによると、元侯爵令嬢とその嫡男が同じスキルを持っているようです!


ですか令嬢は貴族の経験が浅く、嫡男は平民育ちです。

ですので、令嬢には貴族経験が豊富な男性をあてがい、嫡男には私の娘を婚約者としましょう』

みたいなことをね。」

言い終わった後ワインを一口メッサーさんは呑んだ。


「父さんや弟達はどうなるんだ、それより母さんに男を当てがうとは?」

「良い質問だね。

おそらく君とシシリアさん以外の家族には二度と会えなくなるだろう。

当てがうというのは。

シシリアさんは君のお父さんと無理やり別れさせられ、貴族の男と夫婦になり子供を作る道具になるってことかな」

平然というメッサーに怒りテーブルを叩いて立ち上がった。


「道具ってなんですか!」

「そう怒らないでくれ。

貴族にはそういう考えのものがいるんだ。

それだけ植物操作というスキルは、この国には重要なんだ。


それとね、もし君かお母さんの子供がハウエル家の特殊スキルを持っていたら。

君とお母さんは殺される。

もちろん、他の家族も」

「こ、殺される?」

流石に体が固まった。


「エランド侯爵は、言うことのきく子供さえいればいい。

2人以上スキルを持った人間が産まれれば確実に殺される。


君の弟達は、スキルは違うけど侯爵家の血が入っている。

絶対じゃない。エランド侯爵なら必ず排除する。 


アーノルド君。君が侯爵家を継がなければ似たような結末になるだろう。


決めるのは君だ。

まだ数日屋敷にいるのだろう。

継ぐなるならもう村には帰れない。


君も良い年齢だ、貴族として勉強するには遅すぎる。

よく考えてくれ!

じゃあ僕は部屋から出て行くよ、食事の時間になったらメイドが呼びに来るから、待ってるといい」

そう言ったメッサーさんは部屋から出て行った。

俺はコップに注いであるワインをいっきに飲み干した。


食事は調子の良くなったお爺さんとお母さんと俺だけで行われ、いろんな話を聞くことができた。

半分上の空だったけど。

寝る前に母さんがいる部屋を訪ね、

今日聞いた話や聞いた俺の感想を言ってみた。



「アーノルドごめんなさいね。

いつかこんな日が来るってわかってたの。

でも元侯爵家の人間として本当ならアーノルドが継ぐのが1番だと頭ではわかっているのだけど、好きに生きてほしいって心ではおもっているの。

だから父さんと相談して、アーノルドに決めた事に従おうって決めたの。


大丈夫よ、国王様の第二王妃は母さんの親友だからきっとなんとかしてくれるわ。


アーノルドが後悔しない道を選びなさい」






村には母さんだけが帰っていった。

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