エピソード1 アーノルド


「父さん、母さん大事な話ってなに?」

トムが街に出発してから三日後、話があるとテーブルのある部屋に呼ばれた。


「アーノルドまずは椅子に座りなさい」

父さんと母さんが並んで座っている反対側の椅子に座った。


「アーノルド今から言うことは本当のことだ。



母さんは元侯爵令嬢だったんだ」

「侯爵?、、、、ってあの侯爵?」

「そうだ。

そして侯爵家の当主、つまりお前の祖父がお前に会いたいという手紙が届いている」

そう言って父さんは手紙を机の上に置いた。


「実はかなり前から、一度会いに来ないかと手紙が数回来ていてな。

だが俺も母さんも侯爵様に会いに行くわけにはいかない事情があってずっと断っていたんだ。

だが昨日届いた手紙に侯爵様が倒れられたと書いてあってな。

侯爵様ももう随分なお年だ。

いつどうなるかわからない、だから今回は母さんとアーノルドに会いに行ってもらう事にしたんだ」

父さんは真剣な目をして俺に言った。


「父さんは行かないの?」

「ああ、俺は侯爵様に不義理をしてしまってな。合わせる顔がないんだ。


侯爵様は現在王都にいるらしい。

明日から向かってもらいたい」

「わかった。

けどさ俺、礼儀作法とかわかんないんだけど大丈夫かな?」

「そこは問題ない、平民育ちと伝えてある。

多少の無礼は許されるさ。


さっ明日から馬車移動だ!

アーノルド早めに寝て明日に備えろ」

「うわー王都までだからだいぶ時間がかかるね。

母さんは大丈夫なの?」

「大丈夫よ、昔は常に馬車で移動してたもの慣れたものよ」

「常に馬車移動とか本当にご令嬢だったんだ。

じゃあ父さんに言われた通り早く寝るよ。

おやすみ」

父さん達からのおやすみの返事が聞こえた俺は自分の部屋に行き眠った。


朝起きて馬車がいつも止まるところに3人で来ると豪華な馬車が置いてあり、

護衛はなんとSランク冒険者のサトシさんがしてくれるらしい。

父さんと別れ馬車に乗ると見た目とは違いとても広かった。いろんな設備も付いているらしく、野宿はしないらしい。

揺れもほとんどなく快適に王都に着いた。


乗っている間、サトシさんにトムを助けたことやトムがいる街が出身だとかトムはどんな子かとか色々話をしたのでかなり親しくなり、友達になった。


そして馬車は侯爵家の屋敷につき、母さんと俺はメイドさんに案内され豪華な装飾がされている部屋の中に入った。


部屋の中には鼻と顎に髭を生やした、お爺さんがベッドで寝ていた。


母さんはベッドの近くにある椅子に座り話しかけた。


「お父様、シシリアです。

会いに参りました」

「シシリア、暫くぶりだな。

相変わらずリアージュにそっくりだ」

お爺さんは目を開けお母さんを見ている。


「いやですわ、若い頃亡くなられたお母様と一緒にしないでください。


お父様、この子がアーノルドです」

母さんが俺を手で指してお爺さんに紹介してくれた。

お爺さんは上半身だけ起き上がり、俺の目を見た。


「顔はシシリア似なんだな。


あまり体力がない君に会いたかった理由を先に言おう。


わたしの跡を継いでくれないか」

母さんは椅子から立ち、驚いる俺を椅子に座るよう指示した。

おそらくちゃんと聞けってことだろう。

俺は座りお爺さんと目と目を合わせた。


「まずこれを見てほしい。

『ステータスオープン』」



 名前:ローラン・ハウエル年齢:62歳 性別:男


職業:農民


Lv:48

HP:280/280

SP:200/200

STR:50

DEF:60

AGI:55

DEX:100

LUk:50


パッシブスキル

日焼け耐性 LV 4

農具一体  LV 2


アクティブスキル

土壌調査  LV 4

肥料改良  LV Max

植物操作  LV Max




そう言ってステータスを表示し植物操作の場所を指さした。


「アーノルドよ、君にもこのスキルはあるだろう」

「はい、あります」

「このスキルはな、我がハウエル家のみが有する。

我が侯爵領はこのスキルのおかげで、作物を大量に生産することが可能になっている。 


つまり国が一度も飢饉が起きないのは我が侯爵領のおかげだ。


だが私が死に。

植物操作のスキルがないものが侯爵領を継げば作物の大量生産ができなくなり、もし他領が飢饉になってしまった時、食糧の補填ができなくなる。


それは国として危機になる。 


頼む、アーノルド国のため侯爵家を継いでくれ」

そう言ってお爺さんは俺に頭を下げた。


「で、ですか侯爵家の跡を継ぐってことは貴族になるってことですよね?

自分は平民育ちです!無理ですよ!」

「大丈夫だ。

植物操作があれば国も大事にしてくれる、

それにハウエル侯爵家は食糧を作ることが存在意義であるためほとんど社交場にはでないし、王都にも来ない。

だから安心しなさい」

「いやー安心しろと言われましても」

「お義父様。

詳しくは、私が説明してあげますよ」

声のする方を見ると、部屋の入り口に同い年くらいの男の人が立っていた。

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