オーガ


「ガンツ!オーガだ!」

みんなに分かるようにオーガを指差す。

皆はあまりの恐怖に動けなくなる。


オーガ  指定討伐ランク B


「くっお前ら、こいつを連れて街から高ランクの誰かを連れてきてくれ!

一番DEFが高い俺が時間稼ぎする!

俺に構わず逃げろ!

安心しろ!助けが来るまで耐えてみせる!」

ガンツが俺たちに指示を出した。

素早く判断したのはミリメちゃんだった。


「みんな早く行くなのです!

ここにいてもできることはないなのです!

早く街に帰り増援を呼ぶなのです!」

それを聞いたランザとカイルが、一瞬めを合わせ行動を開始する。

俺もそれに合わせて行動を開始する。




ガンツを残して撤退。

頭に昔の記憶が流れる。


俺の村で問題児といえばガンツ。

ちょっと嫌われ者のガンツ。


でもいつも真っ直ぐで、

卑怯なことは絶対しない。

少しライトに似てるこいつは俺は嫌いじゃない、むしろ好きな方だ。

ならやることは一つ。


「みんな先に行っててよ、バカを助けてくる」

そう言って来た道を死ぬ気で走った。



ガンツのところについて見た光景は、

盾はボロボロ、鎧のような防具も所々剥がれてる。そんなガンツに今オーガが腕を振りかぶり攻撃しようとする。


「『フラグ』」

そう言いながらボロボロのガンツに飛び付き転がるようにして攻撃を避けた。


「トム、なぜここにいる!

逃げろと言っただろ!」

「何言ってるんだよ、今日1日は俺の指示に従うんでしょ。

なんでガンツの指示に従わなきゃいけないんだよ」

眉間に皺を寄せて文句を言うガンツに屁理屈を言う。


「さあガンツ、ハジマリ村の底力見せてやるぞ。 

絶対に2人で生きて帰る!」

そう言う俺をポカンとした顔で見てくる。


「はぁ、そういえばそうだったな。

お前はまともそうに見えて、うちの村で一番まともなやつじゃなかったな」

「うるせーよ村一番の問題児が!」

「それはあってる分何もいえんな。

トム指示をくれ」

「作戦はシンプルだ、オーガは攻撃する力はすごいが、動きがあまり早くない。

距離を取り、俺たち2人に注意をそれぞれに移し、時間を稼ぐ。

まあミスったら、どっちかが死ぬ。

ミスんなよガンツ」

「了解した。トムもミスるなよ」

俺はマル秘アイテムの〈刺激物たっぷり入ってます〉をオーガの顔に投げ、苦しんでる隙に右と左に位置どりし、手に石や木を装備した。

あとはお互いに注意を引きつけるためにオーガに物を投げ続けた。 


だがオーガも馬鹿ではなかった。


1人ずつ殺していこうと考えたのか、いくら俺がものを投げてもガンツの方に向かう。

やばいと思った俺は師匠に聞いたオーガの弱点を思い出す。


斬撃。


「『フラグ』」

腰に差している短剣を抜きスキルを唱えながらオーガに思っ切り投げつける。


「がぁぁぁぁぁぁぁぁ」

上手く行ったのか背中に短剣が刺さった。

オーガはこちらを向き、口を開けこちらに向かって来た。

俺は棍棒を抜きオーガに向ける。

勝ち目はない。だが可能性にかける。


「『フラグ』」

オーガの拳が俺に当たる瞬間、目の前に炎が現れた。


炎浄クリメイション

聞いたことある女性の声とオーガが燃え顔を押さえて叫びながら後ずさるのが見えた。


炎剣フレイムソード

水色のポニーテールと赤い防具をした女性は、剣に炎を纏わせオーガを縦に真っ二つにした。

そして俺の方を振り返り。


「よく頑張ったね。

間に合ってよかったよトムくん」

受付と一度訓練をつけてくれた彼女が笑いながら話しかけて来た。


「たっ助かった。」

流石にやばかったので近くにあった木によりらかかりながら座る。

「遅くなってごめんねートムくん。

オーガを見かけた冒険者がギルドに報告しようとしていたら、他の冒険者に絡まれてすぐに報告できなかったみたいなの」

「絡んだ冒険者ってバッテスなんて名前の冒険者じゃないですよね?」

「えーと。正解かな」

俺は深いため息をついた!


「トム!大丈夫なのか!」

「おう!この人に助けてもらったよ!」

反対側にいたガンツが俺がいた場所に近づきながら話しかけて来た。


「おお!貴女はAランクのセリーさんじゃないですか!

俺の友を助けていただきありがとうございます」

ガンツは水色ポニーテールの女性に頭を下げた。


「お礼なんていいよ、これも私のお仕事だからね。

じゃあ帰ろうか。君たちの仲間も森の前で待ってるからさ」

俺たちはセリーさんに先導され森の前にいき

何故かミリメちゃんはガンツではなく俺に抱きつき号泣していた。

泣かしたお詫びに弁当を奢ることになった。





昨日色々あったため今日は商会のお仕事はお休み。

オーガを刺した短剣を点検している。

これがなければ多分ガンツは殺されてたと思う。

師匠にお礼に何かを渡そう。

命の恩人セリーさんにも。

そんなこと考えてると玄関の扉をノックされる。


「はい、どちら様ですか?」

「クルトだ、今いいか?」

「大丈夫だよ。鍵は開いてるから入って」

内心ビクビクしている、普段滅多に怒らないクルル兄が怒ったからだ。

何故逃げなかったのかと。


「じゃあ入るぞ」

そう言ってクルル兄が入ってきた。


後ろに父さん連れて。


「と、父さん久しぶり」

商会で見習いをしてから会っていない。


「クルト、あとは父さんに任せて仕事に戻りなさい」

「わかったよ父さん、僕が散々怒ったから怒るのはなしだよ」

「わかっている」

クルル兄は父さんに言うと部屋から出て行った。


父さんは俺の前にあぐらをかいて座った。


「トム。実はお前が冒険者をやっていることは知っていたんだ」

「えっ」

「週に一度この街に必要な物資や村の商品の売買をしているんだ。

噂くらい何度も聞いている。

とても評判がいいらしいな。

とても誇らしい」

「ありがとう父さん」

父さんはいつもの顔ではなくとても真剣な顔をしている。

「今回の件を聞いた。


原因はトム、お前自身にはない。

だが判断は間違っているのはわかっているな。」

「はい。本来ならガンツを見捨ててでも逃げなきゃいけない。

助けに戻るのは無謀なこと。

でも、でも友達を見捨てることは俺にはできない!」

「そうだな。トムは友達思いのいい子だからな」

父さんは泣いてる俺を抱きしめてくれる。


「トム、その優しさはとても素晴らしいことだ。

だが冒険者というのはもっと非情にならなくてはならない時が沢山ある。

その優しさでトム自身が死んだらたくさんの人が悲しむ」

父さんは抱きしめるのをやめ両肩に手を置き俺と目線を合わせる。


「トム、冒険者をやめなさい。

優しすぎるお前には向かない」

真っ直ぐな目で見てくる父さんをしばらく見ていた。



俺は冒険者を辞めた。







「トムすまん!」

「だから気にすんなよガンツ、お前のせいじゃない。

自分でちゃんと決めたんだ」

俺が冒険者を辞めた理由が自分にあると感じたガンツに会うたびに謝られる。 


「ほらガンツ、俺なんかに構ってないで冒険してこいよ!溢れ出る力を有効利用しないとな!」

「だが」

「悪いと思ってるなら今度なんか奢れよ、それでチャラにしてやるよ」 

「納得はいかんが、報いる方法があるならそれにのろう!」

単純なガンツは仕事に向かった。


俺は本当に冒険者を辞めた。

特に手続きは必要ない。

Eランクの冒険者は見習いなので、仮登録扱い。あと何日かしたら消える。


今日は目的の物がやっと手に入ったので、冒険者ギルドに向かう。


依頼を受けるわけじゃないお礼をしに行くんだ。


ギルドに入り訓練所を覗くと師匠が訓練の講師をやっている、終わるまで待つことにした。




「師匠!」

「おお!トムか久しぶりだな!

元気にしてたか!」

「はい!

実はいただいた短剣のおかげで、

友を救うことができましたのでお礼に参りました。

これがお礼の品です」

師匠に乾燥した花を箱に詰めた物を渡した。


「トムこれは!」

「はい!訓練をしてくださったときに時々、欲しいと口にしていたので、頑張って手に入れました」

師匠に渡したのは〈愛の祈り〉と呼ばれる商品で、貴族でも滅多に手に入れることは出来ない。


「俺から送られるのは少し気持ち悪いとは思いますけど、好きに使って下さい」

「と、トムお前は恩を何倍にして返してくれる男だな!

ありがとう!」

「そんなことないですよ。

えーとこれが保存方法が書いてある紙です。

保存方法を間違えると花びらが壊れちゃいますので気をつけてください」

「なに!みせろ!

なるほど!トムすまないがこれを保存しに家に帰らなくてはならない!ではな!」

説明書を奪い取るようにとった師匠はものすごい速さでギルドをでていった。



「喜んでもらえてよかった!さてもう一件はどうしたらいいだろう」

「あれトムくん久しぶりだね」

どこにいるかわからない本人から声をかけられた。

「セリーさんお久しぶりです!」

今日も水色の髪をポニーテールにしている彼女にいった。

ちなみにセリーさんと呼んでいいと許可を取っている。


「今日はこの前助けていただいたお礼をしに来ました。

なかなか手に入らず、お礼をするのに時間が経ってしまい申し訳ありません。

どうぞ受け取ってください」

セリーさんに髪飾りを渡した。


「トムくん?これ王都で大人気ブランド、

[シーバルト]の最新作だよね?」

「はいそうですよ。

師匠からセリーさんがこのブランドの大ファンって聞きましたので」

「ほ、本当にくれるの」

「命の恩人ですよ?

このくらいのものは渡さないと、見習いとはいえカラム商会の職員とは言えません」

「ありがとうートムくん!!男の人に贈り物を貰うなんて初めてだよ!しかもシーバルトの新作だなんて!」

そう言って俺の頭に抱きついてくるセリーさんにびっくりして動けなかった。


冷静になったセリーさんは顔を真っ赤にしていた。





そして俺はその夜、ベッドの上で日課だったはずのステータスを開く。


「『ステータス』」


 名前:トム 年齢:14歳 性別:男


職業:テンプレ使いver2


Lv:15

HP:50/50

SP:60/60

STR:55

DEF:38

AGI:50

DEX:88

LUk:55


パッシブスキル

フラグ LV Max


アクティブスキル

フラグ LV4

テンプレインストール LV1


「おおなんかすごい上がってるし、新しいスキルがある。

とりあえず順に見て行こう」



パッシブスキルのフラグは3回から5回に増えた。

アクティブのフラグは23%に上がった。

増えたアクティブスキルは。


「今まで出会ったテンプレの中からランダムで一つアクティブスキルを会得する。発動し終えるとスキルは消える。

これもしかしたら戦闘スキルの可能性あるんじゃね?」

可能性を考えてニヤニヤしていると。


「ご主人様」

女の人の声でそう聞こえた。

俺がキョロキョロとしているとまた。

「ご主人様、後ろでございます」

振り向くと半透明の白い幽霊がいた。


「うわー」

俺は叫びながらベッドから飛びだし幽霊から1番遠いであろう壁際に逃げる。


「ご主人様、お会いしとうございました。

福で御座います。」

「、、、福?」

「はい。ご主人様に名付けていただいた白梟の福にございます」

そう言った幽霊は沢山の光の粒に変わり、その光の粒が俺の目の前で梟の形に変化していき、村で懐いてくれていた一メートルの白梟になった。


「福ちゃん?」

「ワッ」

いつもの返事を聞いた俺は抱きつき、モフモフの毛を味わった。

福ちゃんも、時よりホホウと鳴きながら顔を擦り寄せてくる、たまに嘴の先が当たって少し痛いけど今は会えた嬉しさが優先だ。


少し冷静になった俺は福ちゃんから体を離し聞いてみる。

「福ちゃんなのは分かったけど、さっきの姿はどうしたの?」

福ちゃんはまた光の粒達に変わり先程の幽霊の姿になる。


「ご主人様申し訳ございません。この姿でないと言葉を発することが出来ないのです。


順に説明させていただきます」


俺は福ちゃんから説明を受けた。


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