第427話 その……触ってみるか?
「ふぃー」
風呂から上がった爽快感はいつになっても良いモノダー。
オレは服を着てドライヤーで簡単に髪を乾かすと洗濯機を起動。夜の内に干して明日の昼には取り込める様にしておくのだ。
その時、食欲を誘う匂いを嗅覚が感じ取る。腹の虫は再度、食べ物を催促した。
「今あがったよー」
「お、おう」
ん? なんかリンカがよそよそしいな。珍しく料理で失敗でもしたのだろうか?
「作って置いたから、よそって食べろ」
「リンカちゃんは夕飯は食べてきたの?」
「あたしは食べてきたから。お風呂に入る」
「ありがとー」
リンカとは入れ違いでオレは台所へ。あー、腹減ったなぁ。リンカの料理は本当に美味しいんだ。
卵と玉ねぎを使った簡単な親子丼の具がフライパンに入っている。リンカは肉を使ってなくても、味付けを肉が使われた物として再現できる。ご飯三杯は行ける匂いをしていた。
「PS5もそこそこだな」
ロード状況も悪くない。リンカが風呂から上がる頃にはプレイ出来そうだ。流石はPS5。ロード速度がダンチだぜ!
「ふむふむ……」
大きな丼に具を乗せてそのまま丼物として頂く。シンプルながらも洗い物も節約できるので、この形はお勧めだ。
「ホントに美味しいなぁ」
味付けも絶妙にオレ好みなので食が進む進む。あっという間に完食です。
「後でレシピを聞いてみるかな」
自分でも作りたい味だった。しかも、冷蔵庫の余り物だけで作ったのだから、本当に良い奥さんになるよ。リンカは。
「さてと、洗い物でも済ませておくかね」
食事を用意してもらった身としては最低限のマナーである。
「まぁ……うん。隠してあったなら……そう言う気はないって事だよね」
あたしはシャワーのお湯を調整しなが、見つけてしまった避妊具の事が頭から離れなかった。
彼も男だし、隠してあった箱にはそれなりの物も入ってたし……そう言うのに興味がないワケではないのだろう。ある種の健全と言える。
「……まったく……何であたしがこんなに考えないといけないんだ」
止め止め。何がなんでも手を出してこない彼だ。避妊具を持っていたのは考え方が変わって、そう言う事をする時の為の物なのだろう。
身体を洗い、シャワーを止めて身体を拭く。
いつも通りに彼と接すれば良い。良くも悪くも、彼との関係はそう言うモノなのだから。今は。
「やれやれ……あ……あっ!」
そこであたしはミスを犯した。
いつもお風呂に入る前の癖で、回っている洗濯機に着ていた服を全部放り込んでしまっていた。
ゴウンゴウンと回る洗濯機はすすぎに入っている。
「おい……」
「ん? リンカちゃん?」
PS5のデータ移行が完了したタイミングで脱衣所の扉からリンカが顔だけを出して声をかけてくる。
「服……貸してくれ」
「……洗濯機に入れちゃった?」
「……入れた」
オレは適当なパーカーと長ズボンを手渡す。サイズは少し大きいが、袖やかかとは上手く捲って調整してくれるだろう。
そして、少しして脱衣所の扉が開いた。
大きめの服を着たリンカは恥ずかしそうに歩いてくるとオレの近くにストンと座る。
そこでオレは更なる違和感に気がつく。リンカの房がいつも以上に揺れたのだ。
ダボついた服からでは中々に看破出来ない程に僅かな乱れ。いつもリンカの胸に目が行くオレじゃなかったら見逃してるね!
「……もしかして、下着も入れちゃった?」
「……どこ見て、その結論に至ったんだ? オイ」
「ごめんなさい……」
即効でバレた。こう言うところだよ、オレ。リンカだからなのか、余計な一言が気兼ねなく飛び出すんだよなぁ。
「……興味はあるんだろ?」
「……え? 何が?」
「……あたしの胸……見てるってことは……そう言う事だろ?」
リンカは恥ずかしそうにそう言うと顔を横に向ける。
「その……触ってみるか?」
自分の胸に視線と手をおいてリンカが提案して来た。
これは……初めてのパターン!
海外転勤から帰ってきて、女子高生と言う神域に入っていたリンカの生態を
“触ってみるか?”
この発言の意図は慎重に判断しなければならない。
リンカが己の口からオレに好いていると告白してくれたのだ。リンカからすれば好きな男には何でもしたいと思っている“状態異常”にかかっているのだろう。つまり、冷静じゃないってコトさ。
ここはオレがクールに判断しないとな。取りあえず取る選択肢は三つ。
1、次の機会にしておくよ、と菩薩の心で回避する。
2、じゃあ一揉みだけ、とおっぱいを触る。
3、イッヤッフゥ! とスター状態でリンカにルパンダイブを決める。
やれやれ。2と3は完全にアウトだ、アウッツー。そんな事をやってみろや。一瞬で全部終わるぞ。
「や、やっぱり無し! 今の無しで! 忘れろ!」
そう言ってリンカは誤魔化す様に立ち上がった。よかった、冷静になってくれた様だ。
しかし、リンカはダボついた服に動きを取られて上手く立てずに――
「キャッ!!?」
「リンカちゃん!」
テーブルの方へヤバい転び方をしたのでオレは正面に割り込む形で何とか受け止めた。
無論、オレもテーブルとの激突は軌道修正をして回避。リンカの体重も支えたので背中を少しだけ打つ。
「痛てて……リンカちゃん。無事――」
抱き抱える様に仰向けでリンカの安否を気にすると、彼女はオレに瞳を向けていた。
「…………」
沈黙が流れる。風呂上がりで漂う互いの匂い。密着する事で、より深くお互いを感じ取れる。
雰囲気に呑まれそうになったオレは身体を起こそうとした時、リンカは顔を近づけてくると――
「リンカちゃ――」
言葉を塞ぐように、自らの気持ちを深く伝えるキスを重ねてくる。
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