第10話

 なーんだこれ。


 最初は意気揚々と登ろうとしたけど、あまりにも深すぎる。


 これを登るの?そもそもどうやって登るの?


 あーあ、ようやく俺に春が来たと思ったのに。


 一旦寝まーす、不貞寝しまーす。


 一応寝る前にあいつらに助けを求めておくか。


「おーい!穴に落ちたー!助けてくれー!」


 

 シーン



 まぁ聞こえないか。


 あいつら気を失ってたから聞こえないのは仕方ないか。

 

 よく考えてみたらこの穴見たら誰かがいるかもしれない、と思って声をかけるに決まってる。


 じゃあ俺はもう声が聞こえるまで寝とくだけだ。


 ちゃんと起こせよ、レン。


 はぁ〜、こんな罠に引っかかるって俺何か悪い事した?


 こんなに良い事しかしてないのにこの仕打ちは無いと思う。


 俺二善したんだよ、二回善い事をしたんだよ。


 でっかい犬に刺さってた短剣を抜いてあげて、形見を取り返してあげたんだよ!


 善い事をしたんだから善い事が返ってきても良いと思うんだよ。


 で、返ってきたのが落とし穴?酷くない?


 もう寝よ寝よ。


 良かった〜俺硬い所でも寝れる体質で。



 ***



 ん〜モフモフしてて気持ちいい。


 別に硬い所で寝れるけど、やっぱり柔らかい方が良いに決まってる。


 …ん?あれ?俺穴の中で寝てなかったか?


 なのにモフモフしてるのおかしくないか?


 もしかしてもう死んじゃって雲の上っていう事は無いよな?


 俺は死んでない事を祈りながら恐る恐る目を開ける。


「うお!」


 目を開けて確認したら俺の下にでっかい犬が寝ていた。


 なんで?


 もしかしてこいつ俺が1人にならない為にお前もここに飛び込んできたのか?


 こいつは本当に可愛いな。


 レンのバカはこんな可愛い生き物を倒そうとしてたのか?だからあいつは性格が悪いんだよ。


「おーい」


 犬をユサユサと体を揺らして起こす。


「もしかして俺のために来てくれたのか?」


「バウッ!」


 犬は元気よく返事をした。


「えらいえらい」


 思いっきり顔をワシャワシャしてやった。


 結構雑にワシャワシャしてやったのに犬は一切嫌がるそぶり見せない。

 

 嫌がるどころかむしろ喜んでいる。

 

「お前だけだよ、こんな俺でも喜んでくれるのは」


「クゥ〜ン」


「もう決めた。お前をペットとして飼う!師匠に止められてもお前をペットとして飼うから」

 

「バウバウッ!」


「お〜よしよし。嬉しいか?嬉しいか?」


「クゥ〜ン」


 俺泣いちゃうよ。


「バウバウッ!」


「お、どうした?背中に乗れって?」


「バウッ!」


 別に犬が急に話してきた訳ではなく、そう感じただけだ。


 犬の背中に乗ると犬はグングンと俺が落ちていった穴を登っていく。


 やっぱり爪があると登りやすいとかあるのかな?


 なんて事を考えているとあっという間に地上に出てきた。


「すげ〜お前ってすごい奴なんだな」


「バウッ!」


 この素直で可愛いところはレンにも見習ってほしいところだ。


 あれ?そういえばレン達がいないぞ。


 え?そんな事ある?


 お前らのピンチを救った奴にする対応か?泣いちゃうよ。


 もういいよ!今日はこの辺しておいてやるが明日はそうはいかないぞ。


 どうせレンが俺を必死に探すマイちゃんを説得して今日は帰ったのだろう。


 明日の学校で俺を見つけたらあっちから告白してくるかもしれない。


 だから今日は大人しく帰るとしよう。


「家に帰ろっか」


「バウッ!」


 やっぱり可愛い。


 

 




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22時にも投稿します。

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