第9話

「あれ?」


 ラッキースケベの現場に戻ってきたのにもう誰もいなかった。


 ここで合ってますよね?無いとは思うけど今日俺1人で来たって事は無いよね?


 確かここでラッキースケベが起きていたはずなんですが誰もいないってどういう事ですか?


 もしかしてだけど、もしかしなくても俺置いてかれた?


 俺…悪い事した?普通に悲しいよ。


 やっぱり俺って嫌われてたのかな?流石に嫌われ過ぎじゃない?


 嫌われ界のスーパースター過ぎない?


 正直な話すると今更嫌われようが俺は何にも感じなくなってんだよ。


 この世界に転生してから嫌われ過ぎてちょっとやそっとでは俺の心には響かない。


 なにせ俺はオズマサール学園に来てもう84回もフラれているからな。


 男はフラれた数だけ強くなれるが、一体何が強くなったのかは一切分からない。


 異世界転生なら「ステータス」って言えば自分のステータスを見ることが出来るのに。


 そんな事はどうでも良いんだよ!


 結局俺が言いたかったのは…、


 


 ラッキースケベが見たかった!


 もうこれだけ!


 レンが見て、俺が見れないのはおかしいだろ!


 俺あんなに昨日どうするかすごいシミュレーションしたっていうのに…。


 努力してないレンと努力した俺だったら普通ラッキースケベを見る資格があるのは俺だろ!


 レンはむっつりスケベだから興奮してたんだろうなぁ。


 あいつの主人公補正には脱帽だわ、俺なんかモブくらいの存在感なのかもしれないな。


 またメンヘラモードになっていたから切り替えよう。


 俺が今日来たのはマイちゃんと付き合うためであってラッキースケベを見に来たわけではない。


 つまり今から俺がやるべき事はレンからマイちゃんを奪い返すことだ!


 じゃあ行くぞ。


 すぐ行かないとキスしてるまであるぞ。


 とりあえずさっきから大きな音が響いている所に向かおう。


 


 ***



 うわっ、なんだあのでっかい犬は。


 でっかい犬とレンが戦ってる、レンがボロボロになってるって事はそこそこ強い犬なんだろうな。


 ボロボロになってるということはもう相当やられたって事なんだろう。


 じゃあもう助けてやるとするか、これを貸しにして上下関係をしっかりしてやる。


 もう一生こいつは俺に逆らえないようにしてやるよ。


 あ!マイちゃんが倒れてる!俺のマイちゃんをあんなにしたのはお前か!


 腰にささっている刀を抜き、いつもやっている素振りのように刀を振り下ろし、でっかい犬に斬撃を飛ばす。


 と、同時にレンも必殺技っぽいものを繰り出した。


 繰り出したものの俺の斬撃の方が先に当たり、でっかい犬はドサっと倒れた。


 カッケェ。


 テンチライメイだって、名前が。


 あの威力だとあの犬には傷一つもつかないだろうけど名前だけはかっこいいんだよなぁ。


 俺もあんな名前欲しいなぁ。


 あれって自分で付けたのか?それだったらダサいかもしれない。

 

 まぁともあれあの状況で救い出したからマイちゃんは俺に惚れてしまうんだろうなぁ。

 

「クゥーン」


 クゥーン?


 でっかい図体の割に可愛い声出しやがって。


 ん?


 よく見てみるとでっかい犬の脚に何かが刺さっている。


 俺はでっかい犬に近づき、刺さっている物を取ってやる。


「クゥーン」


 でっかい犬は俺に顔をスリスリしてくる。


 か、可愛い。


 俺はこいつをペットにしたいくらいには好きになってしまった。


 これが刺さって気を荒くしていたのか?


 お、これってマイちゃんのお父さんの形見の短刀じゃん。


 ラッキー!まさかここで主人公補正を発揮するとはな。

 

 じゃあこれをマイちゃんに届ければ好感度は鰻登りじゃん!フラグもビンビンに建っちゃうよ!


 さっさとマイちゃんに届けて好感度を上げるんだ!


「マイちゃあああああああああ!!」


 倒れているマイちゃんを起こそうと近づこうとしたら罠の魔法に引っかかってすごい深い穴に落ちてしまった。


 誰だよこんな所に罠の魔法仕掛けた奴は!


 もしかしたら一生穴の中で暮らす事になるかもしれないからお父さんの形見の短刀を地上に投げた。


 俺が穴の中で死んでしまったらお父さんの形見と一緒に眠ってしまうことになってしまうからマイちゃんが可哀想だ。


 だったらせめてマイちゃんには笑顔でいて欲しい。


 ドンッ



 イッテ!流石にあの深さから落ちてきたから尻が痛い。


 穴の深さに絶望してしまいそうになってしまうが、這い上がったら天国が待っている。


 待ってろよ!俺は絶対にここを這い上がってマイちゃんと付き合ってやる!

 

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