2
2
この危機をなんとかしたいけど、僕の力ではどうにもならない。
それならタックさんの意思を尊重して、僕だけでもこの場から逃げ出さないと。それが彼の想いであり、鎧の騎士の注意が僕から離れている間しかこの場を離れられるチャンスはない。
…………。
……。
ッ! 僕は何を考えているんだッ! このままタックさんを見捨てて逃げられるわけがないじゃないか! 弱気になってどうする!?
僕はここへ辿り着くまで、たくさんの人に支えられてきた。村長様やトンモロ村のみんな、ブラックドラゴン、シアの街の人々、レインさん、動植物やモンスターたち、そしてミューリエやタックさん。そのほかの数え切れない存在――。
こんなヘタレな僕を信じて、期待して、背中を押してくれた!
僕は勇者だッ――なんて胸を張って言える立場ではないし、その力もまだないけど、勇者の末裔としての誇りはある! 最後の最後まで諦めちゃいけないんだ!
タックさんひとり守れずに、何が勇者だ? それさえ出来ずに世界を救えるわけがない。
僕には意思疎通の力がある。唯一にして最大の武器。今、鎧の騎士がタックさんの制御下から外れたなら、僕の力は直接通用するはず――。
だから命を賭けてでも絶対に鎧の騎士を止めてみせるッ!
僕はタックさんを庇うような位置へ立ち、大きく深呼吸した。そして迫り来る鎧の騎士をチラリと見つめてから、目を瞑って想いを念じる。
『鎧の騎士よ……どうか止まってくれ……。もう僕らが戦う理由は何もない……』
…………。
……んぐっ……ぅ……。
……全身から一気に力というか、魂が抜けていくような感覚がする。
気を抜くと意識を失ってしまいそうなくらいの苦しさ。激しい脱力感。全身に鳥肌が立って、心臓が締め付けられるような気持ち悪さ。足が震える。耳が遠くなる。呼吸がうまく出来ない。
だけどこの手応えは力が発現している証拠でもある。鎧の騎士へ確実に力が伝わっている。あとは僕の精神力や体力がどれだけ持つかどうかだ。
鎧の騎士の動きが止まるのが先か、それとも僕が倒れるのが先か……。
この時、僕の頭に浮かんだ想いは――
●タックを守ってみせる……→26へ
https://kakuyomu.jp/works/16817139556074419647/episodes/16817139556075783619
●勇者の末裔としての誇り……→31へ
https://kakuyomu.jp/works/16817139556074419647/episodes/16817139556075961649
●自分自身への叱咤……→4へ
https://kakuyomu.jp/works/16817139556074419647/episodes/16817139556074819153
●何も考えられない……→10へ
https://kakuyomu.jp/works/16817139556074419647/episodes/16817139556075039867
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます