第63話

「ルグラン侯爵閣下。妻がルグラン侯爵夫人と仲良くさせて頂いている。今日はアデレードの父として閣下にご挨拶申し上げようと思い、伺った。よろしくお願い致します」


「此方こそ私の妻が伯爵夫人にいつもお世話になっております。うちのローランとそちらのアデレード嬢のことはさておき、妻が友人同士という縁です。これからよろしくお願いします。アデレード嬢もローランと仲良くして下さいね」


「ルグラン侯爵閣下。お初にお目にかかります。バーンズ伯爵家が長女、アデレードでございます。こちらこそよろしくお願いします」


 アデレードも穏やかに微笑みながら初対面のルグラン侯爵に挨拶をする。


「アデレード嬢、今日は約束通り侯爵邸に来てくれて嬉しいです。今日は今からランチを頂いた後、私が侯爵邸を案内しますね」


「ローラン様、ご機嫌よう。まぁ! 楽しみですわ」



「アイリス、今日は来てくれてありがとう! 前回会ってからそんなに日が経っていないけれど、また会えるなんて嬉しいわ!」 


「ご機嫌よう、カトリーヌ。今日は久々にルグラン侯爵邸にお邪魔させて頂いたけれど、相変わらず立派な屋敷ですわね。私もあなたに会えて嬉しいですわ」


 夫人は夫人同士、訪問を喜び合っている。


「皆様、挨拶はこの辺りで終わりとして、今からランチにしようと思います。今日は天気が良いので、庭園にてご用意させて頂きました。雰囲気はガーデンパーティーに近いと思います」



 クリストフの案内で一行はランチの会場の庭園に移動する。


 庭園は先程までいた屋敷のすぐ裏側にある。



 丸いテーブルが三つ程用意され、それぞれに椅子が三脚ずつ用意されている。


 テーブルは日よけの為のパラソルが取り付けられるようになっており、それぞれのテーブルで日よけ対策はしっかりとされている。



 ルグラン侯爵夫妻、バーンズ伯爵夫妻、ローラン、アデレードはサロンからそのままここまで来たが、ここで新たなルグラン侯爵家の家人と合流する。


「初めまして、バーンズ伯爵家の皆様方。私はアンリエットと申します。ローランお兄様の妹ですわ」


 アンリエットはローランの二歳年下の妹である。


 ローランと同じくルグラン侯爵の顔立ちに良く似た娘で、気質は誰に似たのか明るく元気だ。


 今日はたっぷりとしたドレープの水色のドレスを身に纏っている。



「ご挨拶ありがとう。私はバーンズ伯爵家の当主でドミニクという。隣にいるのが妻のアイリスだ。今回はローラン殿と娘のアデレードの交流が目的で訪問させて頂いている」


「初めまして、アンリエット様。私はアデレードと申します。よろしくお願いします」


「わぁ~! 凄く綺麗な方ですわね! ローランお兄様と並んだら美男美女でお似合いですわ! 私とも仲良くして下さいね。私の方が年下ですし、アンリと呼んで下さいまし」


 アンリエットはアデレードを見て、目を爛々と輝かせた。


 実は彼女は美しいものや綺麗なものに目がない。


 自分の義姉になるかもしれないアデレードを一目見て気に入ったようである。


「……アンリエット。アデレード嬢が気に入ったのはわかるが、暴走はしない」


 ルグラン侯爵がアンリエットを窘める。


「はーい。じゃあ私はローランお兄様とアデレード様のテーブルにお邪魔していいかしら?」


 アンリエットがローランとアデレードのテーブルに一緒に座りたいと言った瞬間、ローランが嫌そうな表情をする。


「父上か母上のテーブルに行ってくれませんか?」


「いいじゃないの。大人同士の会話には混ざれません」


「……仕方ないですね。本当は嫌ですが、同席を許可しましょう。私の妹がすみません、アデレード嬢」


「私は構いませんわ。アンリ、ローラン様のお話を色々私に教えて下さい」


「勿論です!」



 こうして、ローランの妹のアンリエットを交えて、賑やかなランチが始まろうとしていた。

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