第41話 リリー視点
ベンの家であるトーマス伯爵家に到着した。
馬車移動は初めてだったけれど、長時間乗ると馬車の揺れでお尻と腰が結構痛くなるのね。
一つ勉強になったわ。
馬車を降りたら、そこには大きな屋敷が目に入る。
バーンズ伯爵邸とは違う石造りの堅牢な屋敷で外観は全く違うけれど、ここの屋敷もバーンズ伯爵邸に負けず劣らず大きな屋敷だ。
平民出身だったわたしがここの屋敷の次期女主人になるのだと思うと、人生って良く出来ているんだなぁとしみじみ思う。
人生で悪いことがあったら、悪いこと続きじゃなくて、良いこともある。
まるで物語のようね。
虐げられていた少女がお城の舞踏会で王子様に見初められ、王子様と結婚して幸せな生活を送る。
自分がこの有名な童話の主人公の少女になったような気分だ。
童話と違って相手は王子様じゃないけれど、それでも十分。
ベンについて行くと、玄関らしき場所に到着し、ベンは大きな扉に付いているドアノッカーを数回鳴らす。
出てきたのは中年のおじさんだった。
どこのお屋敷でもおじさんの使用人を抱えているのかな?
ベンはわたしのことをアデレードの義妹で、ベンの新たな婚約者だとおじさんに紹介する。
その後、おじさんはわたしに自己紹介し、お嬢様として丁寧に接してくれた。
凄く嬉しいな。
わたしを伯爵令嬢扱いしなかったバーンズ伯爵家はやっぱり変なのよ。
でも、わたしがこの屋敷の女主人になった暁にはおじさんはクビにして、若くてかっこいい男の人ばかりで揃えたいな。
毎日見る顔ならそりゃあ
ベンには悪いけれど、若いイケメンは目の保養だし、イケメンにチヤホヤされながらかいがいしくお世話されたいじゃない?
わたしも家令のおじさんに自己紹介する。
ベンの婚約者はアデレードではなくこのわたしだということを強調した。
それと早速ドレスと宝石付きのアクセサリーをおねだりする。
バーンズ伯爵家で着ていたワンピース姿でベンのパパとママに会うのは恥ずかしいし、ベンの婚約者という立場ならいくらでもドレスとアクセサリーをわたしに用意してくれるはず。
やっと念願のドレスが着れるんだと期待に胸を膨らませ、ドキドキしながら、肯定の返事を待つ。
でも、このおじさんはドレスは用意してくれなかった。
ベンもわたしに加勢してくれたけれど、効果はなかった。
現時点でわたしが正式にベンの婚約者になったかどうか判断がつかないからですって。
ベンのパパに事実確認もなしに伯爵家のお金を使って高級なものをわたしに用意するということは出来ないらしい。
そして、ベンの個人的な財産からなら、ベンのパパの確認は要らない為、今すぐ用意することは出来ると言う。
ベンはわたしの為に用意してくれるかなと期待はしたけれど、口をつぐんでいることからお察しだ。
ベンがいくら伯爵家の息子だといっても、それでもドレスを買うにはお金が足りないのかぁ……。
内心とてもがっかりしたけれど、それは言わなかった。
ここでがっかりしたのを表に出して、ベンがわたしを婚約者にしたいという何よりも大切な気持ちが消えてしまえば元も子もない。
話を聞いていると、わたしはベンのパパに婚約者として認めてもらえたら、いくらでもベンの婚約者としてドレス等を買ってもらえる可能性があるみたい。
なら、ベンのパパに認めてもらおう。
それが一番のドレスへの近道だ。
早速ベンの両親に会って、認めてもらおうとおじさんに掛け合ったけれど、今すぐには会えず、会えるのはディナーの時間になると言う。
それまではベンの部屋に待機することになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。