それぞれの過去と思い 十七話

その後、なんとか喧嘩は収まりパーティーの準備を始めた。ルーミとライはドレス、イリスはスーツを着た。


外に出ると大きな馬車が止まっていた。馬車に乗っていた男の人がルーミ達を見ると馬車へと案内してきた。


きっとサイジの差し金だろう。馬車に揺られながら窓の外を眺める。段々と街から抜けているのがわかる。


気づくと不思議な空間に入っていた。周りは真っ白で馬車は浮いているようにも見える。


「どこ…ここ…」


ルーミは呆気にとられている。そして馬車が止まった。ドアが開き、外を見ると大きな屋敷が立っていた。


「す、すごい」


「なんだこれ…。てかここどこだよ」


「いらっしゃいませ」


どこからが声がする気づくと目の前にスーツを着た執事さんのような人が立っていた。


「招待客のお客様ですね。私はヒシリヤと申します。それではご案内致します」


そういうと門が開いた。三人はヒシリヤに着いていった。屋敷に入るとズラっとメイド服を着た女の人が出迎えてくれた。


ヒシリヤに連れられて着いたのは1つの部屋。豪華な絨毯の上に置かれたソファーに座る。


「少々お待ちください。ご主人様をお連れします」


パタリと音が聞こえたと同時に緊張がほぐれた。この屋敷に入った途端、誰一人喋るものはいなかった。


「…す、すごい…。どうなってるの、ここ」


最初に口を開いたのはルーミだった。ルーミは部屋の中を見渡し呆気に取られている。


「ここがあのサイジってやつの家なのか。なんか魔力を感じるな…」


「魔力を感じる?そんなことあるの?」


「ああ、初心者のお前には分からないだろうが、ここの空間に入った時から少し魔力みなぎったんだ。ここの空間は誰かが魔力で作ったものなんじゃないのか?」


最初の一言にルーミはピキっときたが、イリスの考えも納得がいった。最初の一言さえなければ感心してたのに。


いちいち喧嘩売ってくるなんて、かまってほしいのかな?ルーミは心の中でくすくすと笑った。それが表に出ていたのかイリスが


「なんだよ!」


と怒った。


「二人とも落ち着きなさい。ここまで来て喧嘩しないの」


ライが宥める。ライは至って冷静だ。先程から表情をひとつも変えない。緊張しているのか、それとも…。


「おい、あのオースタって人は連れてきたのか?」


イリスが切り替えて言う。


思えば確かに。あの時サイジにオースタさんを連れてくるよう頼み込まれた。けれどすっかり忘れていた。ギリギリまで寝ていたから、誰かさんのせいで…。


「ええ、オースタさんを呼びに行ったらいなかったの。出かけているからと思って置き手紙を置いていったわ。けれど結局来なくて…」


「マジか。それじゃあどうする?まあここに来たらもうおそいけど」


「それなら安心したまえ」


三人は驚いてドアの方を見た。そこには笑顔で立っているサイジがいた。不気味な笑みでソファーに座ってくる。三人はサイジから少し距離をとった。


「よく来てくれたね。パーティーの準備は満タンさ。その前に、少しお話ししようか」

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