6. ベッドで現状確認

 両親が心配してまだ寝ていた方がいいと言うので、私はおとなしくベッドに横になった。


「ところで、私は倒れて意識を失ったのですか?」

「覚えていないのか?」


「はい……」


 覚えているのは、プロデューサーと話した記憶が最後だ。

 その後、今までどうしていたのか記憶がまるでない。


「それなら、今は考えずに寝ていなさい」


 そう、言われても、あれこれ考えずにはいられないが、表面上は素直に従っておく。


「はい、おやすみなさい。お父様、お母様」

「大人しく寝ているのよ、おやすみマリー」

「ゆっくりやすみなさい」


 両親と使用人たちが出ていったところで、私は改めて考えをまとめることにした。


 まずは、一番訳が分からないのは、なぜ私が子どもの姿になっているかだが、やったのはプロデューサーで間違いないだろう。

 プロデューサーから、悪役令嬢役を引き受けた結果、こうなったと考えるのが一番妥当だ。


 だが、その方法がわからない。

 私の知る限り、地球の科学力ではこんなことは不可能だ。


 つまり、プロデューサーは地球人ではない可能性が高い。

 よく考えれば、出会った時からキラキラ煌めいていた。

 あれは、後光のようなものだったのだろう。


 名刺にあった、神様プロダクションの名前からして、神様か、それに近い存在であるのだろう。


 そして、プロデューサーによって連れてこられたであろうこの場所は、舞台のセットであることも否定できないが、多分公爵邸で間違いないだろう。

 今は、出歩くわけにはいかないから、確認することは難しいが、ここは、日本で、いや、地球でないことを覚悟しておくべきだろう。


 今いる、ここが舞台なのか、舞台は他にあるのかは、台本を読まないことにはわからないが、プロデューサーは学園恋愛ものだと言っていた。それなら、舞台は学園の可能性が高い。

 プロデューサーが言っていた準備期間が七年というのが本当だとしたなら、これから七年が、その準備期間になるのであろう。七年後に学園に通っているのかもしれない。


 私としては、ただの舞台かドラマの役だと思って引き受けたわけだが、どうも、そんなものではない感じだ。

 だが、台本があり、悪役令嬢“役”であるというなら、役者を目指す私には、これは舞台やドラマと変わらない。


 かなり、特殊な状況に置かれているが、女優として受けた仕事は、きちんとこなさなければいけない。

 それは、たとえ、私がまだ、女優の卵だとしてもだ。


 四の五の言っても、事態が改善するとは思えない。

 それに、もしかすると、これは、女優として羽ばたく私の、成長ドキュメント番組かもしれない。

 どこかに隠しカメラがあって、今も記録されているかもしれないのだ。

 何事にも、常に全力で取り組まなければいけないだろう。


 マネージャーはいないが、この準備期間中に、自分なりに悪役令嬢として、役になりきらなくてはならない。

 私は、悪役令嬢役になりきるため、全力で努力すると決めたのだった。


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