4. 目覚めればそこは……

「ここ、どこだっけ?」


 気がついたら私は、天蓋付きのベッドに寝ていた。

 とりあえず上体を起こして周りを確認する。


「見たことない部屋だ……」


 ベッドもそうだが、部屋にある調度品がどれも高級そうだ。


 私は寝る前の記憶を探っていく。


「確か、オーディションに落ちて、帰る途中にスカウトされたんだったわ」


 そうだ、悪役令嬢役を引き受けることになって、それから、目を覚ましたら公爵邸だと言われて、光に包まれたのだった。


「あれは魔法だったのかしら? そんなことあり得ないわよね」


 ともあれ、あのプロデューサーが言ったことが本当なら、ここは公爵邸だろう。

 ちょっと、拉致されたように連れてこられたが、冷静に考えてみたら、もしかしたらこれはドッキリ番組なのだろうか?


 魔法や異世界なんてありえない、カラクリがあると考えるのが一番現実的だ。


 それなら、今も隠しカメラで撮影されているはずである。

 役者としては、気づかないふりをして、不自然にならないように演技を続けた方がいいだろう。


 さて、そうと決まれば、これからどうすべきだろう。

 枕元を見ると、そこには渡された台本が置かれていた。


 私はその台本を手に取る。

 改めて、中身を確認しようとしたが、そこで、それどころではないことに気づいてしまった。


「……手が小さい?」


 自分の手が、子どものように小さかった。

 どうなっているのだろう? 確認すると手だけでなく、体全体が小さくなっているようだ。


 こんなこと、ドッキリでできる? できるわけがない!


 部屋に姿見があったので、私はベッドから飛び降り、鏡の前に立った。


「なんじゃこりゃー!」


 私は、思わず大声を上げてしまった。

 鏡に映った私は、黒髪の前髪パッツンのおかっぱ頭に、釣り上がった黒目、鼻筋が通った、クレオパトラを想像させられる。その顔は、確かに私で間違いなかったが、サイズが明らかに幼女のそれだった。


「子どもに戻ってる?」


 この場合、若返ったと喜ぶべきところだろうか?

 やはり、これは魔法? ということは、ここは異世界?


 ショックが大き過ぎて、次の行動に移れないでいると、部屋のドアがいきなり開いて、人が入ってきた。


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