第14話 設計
動力については直ぐにどうこうできるわけではないので、文献はこれからも継続的に調査することとして…取り敢えずは実現できそうなところから着手していこう。
そう、レティシアは考えた。
(動力もそうだけど、なにはともあれ「レール」と「車輪」が無いことには鉄道とは言えない。幸いにも金属加工の技術レベルはかなり期待できそうだから、先ずは試しに作ってもらうのが良いかも。ごくごく簡単なものなら設計もそんなに難しくないだろう)
「ねえ、エリーシャ…?」
「はい、何でございましょうか、お嬢様」
「何か書くもの…大きめの紙と鉛筆、製図…定規とかコンパスとかって無い?」
「(今度は何を始めるおつもりなのかしら?)…紙や筆記具でしたら、アンリ様にお願いすればおそらく…定規やコンパスなどは…工房の親方に聞いてみますか」
「工房?」
「はい。邸で使う金物や、衛兵の皆さんの装備など…色々製作したり、修繕したりしてくれるところですよ」
「へえ!そんなのがあったんだ〜」
(これは…良いことを聞いたぞ。設計が出来たら、そこに制作を依頼できるかも!)
最終的に作るものから考えれば、公爵家付の工房程度では生産能力はたかが知れてるのだが…当面の目標は模型製作となるので、それくらいならお願いできるかも、と彼女は考えるのだった。
「では、借りてきますね」
「うん、お願いね」
「紙と筆記具?それは構わないけど…どうしたんだい?」
「お嬢様が使いたいと仰ってまして。あと、定規やコンパスも…とのことでしたので、これから工房の方にも行ってきます」
「…今度は何を始める気なんだ?」
「さぁ…私にもよく分からないのですが…特に問題は無いかと思い」
「ふむ。まあ、本を読み漁って何か興味が湧いたのだろうな。…読んでる本の内容が、5歳児とは思えぬのだが」
レティシアは、当初こそ目立たぬように…などと考えていたが、最近では全く自重なしである。
彼女は夢中になると周りが見えなくなる娘なのだ。
エリーシャが借りてきてくれた諸々で、レティシアは製図を始めた。
(先ずはレールだけど……断面形状はアルファベットの「I」の字型に近いけど…下面の方が広く…車輪が接する頭頂面は角にRが付いていて………本当は応力のかかり方とか考えて最適な形状があるんだろうけど…そこは試行錯誤になるかな………よし、形状はこんな感じかな?)
ある程度は記憶を頼りに、定規などを駆使してレールの断面形状を書き込む。
(寸法はどうしよう?模型って言っても…人を乗せられるくらいのサイズは欲しいところだね。ライブスチームみたいな感じで。う〜ん…正確な規格は覚えてないけど…まぁ、この世界では私がパイオニアなんだから決めちゃえばいいか。キリのいい数字で)
模型に限らず、鉄道の規格…ゲージは鉄道発祥のイギリスで用いられていた単位である「インチ」を用いていたため、メートル法に換算すると半端な値になる。
どうせ自分が1から作るのだから…と、ゲージについては分かりやすい数字にしようと考えたのだった。
(そう言えば本を読んでても気になったんだけど。度量衡…長さとか重さとかの単位が、地球と殆ど同じなのはどういうことなんだろ?……もしかして、過去に私と同じような転生者がいたのかな…?だったら今この世界にもいるかもしれない……な〜んて、そんな都合の良い話があるわけないか…)
少しだけ…自分と同じ境遇の人がいる可能性があるかも知れない…とレティシアは思った。
だが、あまり現実的でない期待をしても辛くなるだけだと、彼女は即座にその考えを振り払う。
(さて、次は車輪と……台車や車体は、取り敢えずはザックリ適当で良いや)
そうして、設計作業に没頭していくのであった。
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