第100話 野営を快適にする準備
あー、疲れたぁ~。俺は特になんもしてねぇけど。炎天下で歩き続けるとか本当に大変だったなぁ。俺は空調機能を付けたローブを着てたからそれほど暑くなかったけど。
俺たちは日が暮れる直前にようやく36層に到達した。次回からはやはりダンジョン内で野宿しながら攻略していく方法に切り替える方針になりそうだ。そのため、次回からの攻略に向けて英気を養うために長めの休暇を取ることになった。
「で、私にどうしろと?」
「もっと快適に野宿ができるようになりませんか?」
「あれ以上ですか?」
何を言っているんだい? 爽やか君。小さいながらもプライベート空間を作れるテントと腰の痛くならないベッドモドキ。照明に焚き火にコンロに虫よけに簡易トイレまでついているのに、これ以上快適にするとかグランピングですか? それともキャンピングカーでもご所望ですか? 作れるけど目立つよ? 主に悪い方向に。
「ですが、天導さんもいるのですし……」
それを引き合いに出したら卑怯だよ。てか、アイナを出しに使えば俺が釣れるとおもっているな、爽やか君。いや、間違ってないけど。
「あら、わたくしは今のままでも十分よ?」
アイナってお嬢様なのに意外と野生児な面もあるんだよな。どこでも寝れるのは素直に凄いと思う。俺はどこでも寝れるけど、いつでも不眠症なので大体寝不足になるんだ。マジキツイ。
「俺も大丈夫だな」
「俺もですよ。キャンプって楽しいですし」
「俺は慣れてる」
野郎3人もそう言ってるぞ。一番軟弱なのは爽やか君じゃないか。てか、何で休みにパーティ全員俺の部屋にいるんだよ。だらけられないじゃない。ふぁ~、眠い。
爽やか君は生まれも育ちも上流階級っぽいので、キャンプとかしたことないのだろう。もしくは、したことがあってもグランピングやコテージみたいなものに泊まっているタイプだ。疲れすぎて職場近くの公園のベンチで寝たこととかなさそうだ。
「うぅ……」
「はぁ……、九城さんはどんな野宿をしたいのですか?」
「……いいんですか?」
何この人。気弱になったり、目がキラキラしたりで情緒不安定かな? もしかすると女性目線から見ると、これがギャップ萌えとかいうものだろうか。あざといわぁ……。俺もギャップ萌えしようかな。そしたらモテるかな? 何? イケメン限定? ですよねぇ。
「えーっとですね、私が寝泊まりしたいのは……」
ほー、フムフム。なるほどねー。オーケー。1つ言わせてくれ。出来るわけないだろ! いつもの賢さは何処に行った!? 何だよ、トレーラーハウスって。しかも二階建て? 冗談もほどほどにしなさいよ!?
「できそうですか?」
「無理ですね」
「えぇ!?」
驚くことかよ。見ろ。門番君ですらドン引きしてるんだぞ。あのどMの門番君が引くって相当だよ。アイナなんか物凄く冷たい目で見てるんだぞ。俺までゾクゾクするじゃないか。
「九城には慣れてもらうしかないな」
「そうですね。大丈夫ですよ。すぐに慣れますって」
「習うより慣れろ、と言うしな。慣れろ」
「えぇ……」
「ほら、みんなもそう言っているじゃない。頑張りなさい」
爽やか君はあえなく撃沈した。でもまあ、爽やか君があれだけ砕けた態度を取れるようになったってことはいいことなんだろうな。ずっとグループのリーダーとして皆を引っ張っていて緊張の連続だったのだから、リーダーの仮面が外れたということは、それだけ信頼関係が構築できたってことの裏返しだろう。
「簡易的な仕切りで疑似的な部屋を作ることも出来ますが、ダンジョン内でそんなことをして良いのかはわからないので、気になるのなら九城さんが聞き出してください」
「聞いてきます」
あ、どっか行った。たぶん冒険者ギルドにナンパしに行ったな。即断即決して行動に移せるのはさすがだ。俺は面倒がって後でいいやってなる。これができる人間との違いかもしれない。
爽やか君が聞き出した情報によると、野営にそんなルールはないためご自由にどうぞ、と言われたらしい。ただし、人が多いところでそれをやると変な恨みを買う可能性があるのでお勧めしないそうだ。
「普通は階段のある広場で野営するらしいです。ですが、それ以外の場所で野営をしても問題ありません。その際は魔物に注意しなければならないそうです」
野営地周辺の魔物を事前に狩っておくことや、夜番を複数人置いておくことを忘れなければどこで野営しても大体同じらしい。転移石のある広場は魔物が侵入しないが、代わりに盗賊などに警戒する必要があるそうだ。
「では、仕切りの準備をお願いします」
頼まれてしまった。俺の貴重な休日に仕事が入った気分だ。仕方ねぇなぁ。ま、近いうちにアイナを任せることになるから、これくらいは請け負ってやろう。あとはこれまでの貸しで相殺で。
俺は爽やか君たちが去った後、錬金術で適当な仕切りを作る。衝立よりも大きくて頑丈なものができあがった。
「こんなものを作るくらいなら、小さな家を作った方がマシじゃない?」
「なんだ。欲しいのか?」
4畳もあれば十分寝泊まりできるので、そのサイズの小屋だ。アイナとか爽やか君から見ると犬小屋かもしれないが。大きかったので外に作業台を持ち出して作ってみると、アイナはとても気に入ったようだ。そして、その様子を爽やか君たちに見られてしまったのは大誤算だ。
「もっと大きくできませんか?」
「清水さんにお願いしてください」
俺は面倒事から逃げ出した。
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