トラウマ



グリム 「母さん。どこに向かってるの?」


マリアは何も言わず、険しい顔をしながら運転を続ける。


グリム 「母さん。なんで僕はみんなと違うの?」


マリア 「グリム。あなたは、、、、」


交差点に差し掛かると、横からトラックが二人の乗る車の運転席側に突っ込んできた。












突き飛ばされた車は、原型がわからないくらいまで大破した。




グリム 「か、母さん」




ぐちゃぐちゃの車内で、必死にマリアの方を見るグリム。












マリア 「グリム。よく聞いて」



マリアの腹には車の破片が刺さり、綺麗な白のワンピースが赤く染まっているのが見えた。



グリム 「母さん。どうしよう。血が」



マリアは呼吸が浅くなりながらも、ゆっくりと口を開いた。



マリア 「グリム。あなたの力はきっと人の役に立つわ」












動揺し、泣きじゃくるグリムの手袋をそっと外すマリア


グリム 「だめだよ。だめだよ母さん」



マリアは微笑みかけ、苦しい表情を見せずに、グリムの顔にそっと触れる。




マリア 「あなたのおかげで、楽になれる。ありがとうグリム。愛してる」











グリムの手を握り、マリアは穏やかに目を閉じた。




グリムはマリアの手を握り返すが、マリアの手は握り返す事はなかった。





グリム 「嫌だ。嫌だ。嫌だ。死なないで。目を開けて」











グリムは自分の手をガラスの破片で何度も刺した。





グリム 「嫌だ。嫌だ。こんな手。こんな手ーーーー」





グリムの目は正気ではなく、何度も何度も自分の手を傷つけた。












クロウ 「おい。おい」




グリムは息を荒げながら目を覚ました。



クロウ 「着いたぞ。大丈夫か?」




グリム 「ああ、、、、大丈夫」











クロウ 「あまり無理はするなよ。これお前のだ」


赤いカーネーションの花束を渡されるグリム。



グリム 「なんだ」



外を見ると、墓地が広がっている。



クロウ 「街を出る前に挨拶しておけ。もう、、、、戻って来れないかもしれないからな」









グリム 「なんでこの花なんだ」



クロウ 「気になるなら自分で調べろ」



グリム 「なら、いい」



2人は車から出て、ゆっくりと墓地に向かった。


グリムは赤いカーネーションを細い腕で

ギュッと抱え込んだ。




6話に続く

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