第82話 ヨコタワルアルフヘイム
少女の放った
「なッ?わちきをッ、わちきのッ、わちきにッ、な、何て事をしてくれるのですわッ?」
しゅうぅぅぅぅ
「キズがッ?!」
フレイヤは顔に驚愕を浮かべ、あからさまに動揺していた。それは傷を負わされた事に拠る驚愕であろうが、フレイヤの傷はみるみる内に修復されていく。傷が瞬時に回復する少女とは違って多少時間が掛かるようだが、
「おい、ズラかるぞッ!」
がしッ
「ちょ、何でよッ?それに痛いってば」
「アイツはフレイヤじゃなくて、あのオッサンでも倒せなかった、ナントカって言う名前の魔性なんだとよッ!だから分が悪い、一旦退くぞッ!」
ばッ
「おい、オレサマの話しが聞こえなかったのか?兎に角一旦退くぞ」
「イヤッ。だって、考えてもみて?それだけ強敵なアイツを野放しにしてたら、もっと大変な事になるってコトでしょ?アタシに考えがあるわ。手伝って!」
「全くおめぇは……。はぁ、やれやれ。なんとかならんかったら、タダじゃ済まねえぞ」
「そん時はアンタに「根の国」を案内してもらうわよッ!」
少女はスサノオにウインクをしてから屈託の無い笑顔を向けていた。スサノオはどこにそんな自信があるのか分からなかったが、考えがあると言った少女に乗っかってみる事にしたのだった。
「へっ、おめぇのお
「アタシがとびっきりの、とっておきをフレイヤに放つからそれを作り上げるじ――」
ぽんぽん
「まぁだ、力を隠し持ってやがんのか?でもま、そういう事なら任せろッ!要するに時間稼ぎすればいいんだろッ」
スサノオは率直に理解した。少女が一体、何をする気なのかは正直なところ気になっていたが、この場に居合わせる以上それは今聞かなくても分かるコトだ。
それよりも何よりも、少女が何かをする「その何か」を失敗させられたら、見たくても見る事は叶わなくなるから、そっちの方が大問題だった。
だから今は自身を修復している真っ最中のフレイヤに追撃を行い、フレイヤの修復を妨害する事で少女の邪魔をさせない事とした。
要するに「攻撃は最大の防御作戦」である。
幾重にも及ぶ剣閃がフレイヤに向かっていった。スサノオはフレイヤに操られた記憶があるので、
こうしてフレイヤの白く細い足は切断され、柔らかそうな腕は吹き飛び、淫らに這わしていた手指はバラバラになって飛び散っていく。その身を微かに隠していただけの薄衣はもはや原型を留めておらず、完全に露わになった
だがそれでも尚、スサノオは剣閃を止めなかった。
流石にここまでズッタズタに斬られれば
だが、斬り刻まれ修復を繰り返しているだけの、当のフレイヤはただただ
その顔から妖艶さは既に失われていたが、
「あぁん♡あぁ、良いわぁ凄くカンジちゃうのですわぁ♡慣れてしまえばこれも快感しかないのですわぁ♡」
「なん……だとッ?!」
「こ、この痛みは快感ですわぁ♡
フレイヤの恍惚の叫びが響き、至るところでフレイヤは「ビクッビクッ」と痙攣していた。その身体は痛みを快感にして、さらに何回も絶頂へと昇っていっている様子だ。
だが一方で、スサノオはキレた。
キレたスサノオの剣閃はフレイヤの口を斬り裂き、「その
「醜女……醜女ですって?わちきは美の女神、フレイヤですわよ?わちきより美しく可憐な美貌を湛える者なんて、誰一人として存在していないのですわ。男は皆、わちきの
ざしゅッ
「それ以上、それ以上、口を開くなッ、言葉を紡ぐなこの醜女えぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
口元を斬り裂かれながらもフレイヤは紡ぎ、スサノオを挑発していた。
それはもちろん、聞かれたくない相手がいるからなのだが。
スサノオは
その怒りは、操られてしまった自分への不甲斐無さが齎しているのかもしれないが、そうであればただの八つ当たりなのは言わずもがなである。
数を更に増して放たれる剣閃は、フレイヤの
それはウルよりも細々と斬り刻まれており、一目で生命尽きたと考えるのが道理としか言えない光景だった。
だが、それでもフレイヤだったモノは修復し、元の姿に戻っていこうとしていた。
「ッ?!」
「おいおい、
スサノオは流石に驚いていた。それはその通りとしか言いようがない光景が目の前にあり、見ている自分の目を疑いたくなるのも分かる光景だ。
何故ならそこには首を切り離され、頭蓋を粉々に砕かれ、四肢も次第も細切れのミンチ同然の姿になっていても尚、修復していくフレイヤの身体があるからだ。
それは完全に異常であるとしか言えず、少女の
1つ欠点があるとすれば、それは瞬時修復ではなく徐々に修復されていくので、その途上は途轍もなくグロいとしか言えない点だろう。
「化け物め。生来の化け物め。これ程の化け物、あのヤマタノ……」
「お待たせッ、完成したわ。これで滅ぼせるハズよ」
スサノオは戦慄を覚えていた。殺しても殺し尽くせないモノの存在を認めたくなかったからだ。そして、闘神である事がそれを認めたくなかったが、打つ手が自分には残されていないのを認めるしかなかったのもまた、事実だった。
-・-・-・-・-・-・-
少女は迷っていた。「はたして「
全ての属性を有する少女が扱える事の出来る最大火力、最高威力の術式は「
それ程の威力であり、その力以上の力を少女は持ち得ていない。
そもそも、「魔法の領域に片足を突っ込んでいる」とまで評価されているので、それを超えるのは既に「魔法」以外に存在しない事になる。
それ故に、もしそれが「利かなかったら?」と考えた時、もう「打つ手」は無い事になってしまい、「討伐」は叶わないのである。これは
だからこそ、迷っていた。「神殺し」というその事が本当に叶うだけの力を、
他の「概念」を付加させる事は出来るが、そうすると「消滅」の概念はそれだけ弱くなっていくのもまた事実だ。
拠って1番の悩みどころは、フレイヤの持つ……若しくは、フレイヤに宿っている魔性の持つ……概念を消滅させ得る「
「えぇい、ぐちぐち考えててもしゃーないわねッ!あんな事言っちゃった以上、
「よしッ!女は一に度胸!二に度胸!
「やったるわあぁぁぁぁぁぁッ」
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