第69話 It's a story of lamenting not getting tired.
「ほう、てっきりここにはあの娘か、バルドルが乗り込んで来ると思ってたのだが、招かれざる客とはこの事よな?」
「なぁに、てめぇのせいでオレサマにあらぬ疑いが掛けられたモンでな、てめぇにオトシマエを付けさせる為に来たんだ。
「良いだろう。それでは相手をさせて貰おう」
ウトガルザは玉座から立ち上がり、その手には金色に輝く
「な、何だと?何故、
フリズスキャールヴで「観測」していたオーディンは衝撃の光景に思わず声を上げていた。
その事は足元に控えていたフリッグとヴォルを驚かせるには充分だった。
「どうしたのでありんすえ?」
「フレイヤを直ぐにここに呼べ、フリッグ」
「
「ヴォル、フレイヤが言っていた
「それを回収しに行ったトール殿はいずこに?」
「まだ向かっている途上だ」
「そうですか……。ですが何やら胸騒ぎがします。直ちに行軍を中止し急いで「ヴァーラスキャールヴ」に帰還する旨の伝令を送る事を推奨します」
オーディンはヴォルの献策を受ける事にした。だが、その伝令を出すべく立ち上がった時にフレイヤを呼びに行ったフリッグがオーディンの元に戻って来たのだった。
「フレイヤは戻ってないようでありんす」
「ヴォル、フレイヤが裏切る可能性はあるか?」
「それは解り兼ねますが、もしも仮にフレイヤが裏切るのであれば、フレイも同じでしょう」
がたッ
「まさか、そんな……それではッ」
ヴォルの紡いだ言葉はオーディンの顔を蒼白にさせた。拠って血相を変えたオーディンはフリズスキャールヴに戻ると、
オーディンは「観測」の結果、バルドル達が「消えた」事に気付き、その顔には「驚愕」の2文字を浮かばせていた。
「一体、何が起きていると言うのだ?」
「随分と
「じゃあ、とっととおっ始めようぜッ!でぇぇりゃあッ」
どぉん
スサノオはひとっ走りに跳躍すると玉座の「ウトガルザ」目掛けて斬り付けていき、その一太刀でウトガルザの玉座は崩壊した。
しかし「ウトガルザ」はスサノオの攻撃を宙に浮く事で躱していたのだった。
「威勢がいいな。では、次はこちらからいかせてもらおう」
ぷぉぉぉぉぉん
ウトガルザの掌からは光球が次々と生まれ落ち、それらは全てスサノオ目掛けて飛来していく。
スサノオはそれを部屋中駆けずり回って避けていた。こうして玉座の間はウトガルザの光球に因り
「自分で自分ち壊してりゃ世話ねぇな!」
「ふん、ほざけ」
「チッ、
スサノオは頭から玉かんざしを1つ取り、ウトガルザの方へ投げた。流石にその光景に「ウトガルザ」は失笑する事しか出来なかった。
「ふん、そんな「髪飾り」1つで何が出来る?」
「八雲立つ 八重垣作る
しゃんしゃんしゃんしゃん
スサノオは玉かんざしを使って空中に「足場」を次々と「開花」させていった。
拠ってスサノオはその「足場」を、「ウトガルザ」目掛けて駆け登っていく。
「なる程、考えたな」
「でえぇぇやぁぁぁッ」
ぶぉん
「何だと?!当たらねぇ。コイツ、一体どうなってやがる」
たったっ
「こなくそッちぃえぇあッ!」
ぶぉん
スサノオは心の中では「迷い」が生じ始めていた。しかしいくら「迷い」があろうとも攻撃の手は緩める事無く剣撃を放つ。
だがそれら全て、やはり当たる事無く空を斬るばかりだった。
「なんだ、こんなものか。少し興醒めだな」
パンッ
「ウトガルザ」が手を1回叩いた。そしてそれをきっかけにスサノオの視界は歪み、身体は一気に変調を来たしていく。
「て、てめぇ、い、一体、何をしやがった……。ど、どこ……だッ、どこに行き……やがったッ。で、出て来いッ、卑怯だ……ぞッ」
ぶぉんッぶぉん
スサノオは身体の変調に因って足が
しかし、スサノオの視界に映る「ウトガルザ」は全て幻であり、傍目にはその剣撃は全て見当違いな方向を斬り結んでいる事になる。
「こうなると幾ら勇ましくても
「それにこの程度では、
「それ、もう少しじっくりと甚振ってから、ラクに死なせてやるとするか」
「ウトガルザ」はスサノオに対し光球を放ち、その光球の直撃を以ってスサノオは床に転がっていく。
いくら直撃を受けてもスサノオは立ち上がるが、その度に同じ事を繰り返し、結果として「ウトガルザ」は手に持つミョルニルを一度も使う事無くスサノオ倒してしまったのである。
拠ってスサノオは幾度も光球をその身に受け、立ち上がる事も出来なくなっていた。
「では、
「ウソッ!あのままじゃッ。ヘルモーズさん投げてッ!あと、スサノオの回収をお願いッ!」
「なッ?!」
少女は玉座の間の中に横たわるスサノオと止めを刺そうとしている「ウトガルザ」を見た。
ヘルモーズは少女の声に素早く反応し、手に持つドラウプニルを躊躇する事なく投げたのだった。
少女は剣を構えるとドラウプニルが輝きを放っていく中、「ウトガルザ」へと特攻を仕掛けていく。
光に拠って徐々に視界がぼんやりとしていくが、それは「ウトガルザ」も同じ事だった。
「でぇえぇえええぇええぇぇやああぁぁぁぁああッ!」
ざしゅッ
放たれた斬撃。少女は確かに「手応え」を感じ取っていた。だが、それがどの程度の「手応え」であったかは、目が
少女は斬撃の手応えを感じ取った後、反撃回避の為にその場から後方へと跳んでいた。
輝きが完全に消えるとそこには、苦痛で顔を歪めている「ウトガルザ」の姿があった。
「よもや、奇襲で倒されようとわ……な」
「やはり、1番の障害はキサマだった……か」
ガランッ
どさっ
「ウトガルザ」の身体は左の肩口から腰の辺りまで切り離されており、それが少女の懇親の一撃に拠るものなのは明白だった。
そして、右手に持っていた
少女は警戒を解いたワケではないが、念の為バイザーで確認すると光点は失くなっていた。
「なんか、
「ところでヘルモーズさん、スサノオはどんな感じ?」
「意識は無さそうですが、呼吸は安定している模様です。何をされたのか分かれば手の打ちようはあるのですが、現状では何も」
「そっかぁ、じゃあそれならさっきの隠れ家に戻って様子を見る事にしましょッ」
ヘルモーズにスサノオを預け、少女は先頭で警戒しつつ城から出ていった。
流石にヘルモーズ1人で意識の無いスサノオを連れ
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