第440話 尊厳が侵されている

 僕も我慢出来なくて、〈アコ〉を抱き寄せた。


 「うんん、〈タロ〉様、少しだけですよ」


 僕は〈アコ〉を強く抱いて、唇にキスをした。

 〈アコ〉も、僕の裸の背中に手を回してくる。〈アコ〉の手の平が、とても熱いと思う。

 そして、寝巻の裾から手を入れて、おっぱいも触ることにする。

 だって、触りたいだろう。


 おっぱいは、少し濡れており、いつもよりしっとりした感じだ。

 こんなのも良いぞ。もっと触ろう。


 「〈タロ〉様、もうダメですわ。次は〈クルス〉ちゃんの番です」


 あー、これからなのに。


 それにやっと気づいたんだが。

 裸で残されている僕は、とても情けないんじゃないかな。

 基本的な人権の、尊厳が侵されている気がする。

 僕は、今、かなりカッコ悪いんじゃないかな。


 「〈タロ〉様、下着を着せてあげますね」


 〈クルス〉は、パンツを広げて、僕が足を入れるのを待っている。

 〈クルス〉に、僕のパンツを広げられているのは、ちょっとどうかと思う。


 でも、そういう流れになっているから、抵抗は出来なさそうだ。

 僕はしょうがないと思って、両足を突っ込んだ。


 〈クルス〉が、パンツを上げた時、あそこがペロンと跳ねた。

 〈クルス〉の顔は、真っ赤になっていく。〈クルス〉も、恥ずかしいんだな。

 それを発見したら、もう止まれない。


 僕は〈クルス〉を引き寄せて、唇へ強引にキスをした。

 〈クルス〉の洗い髪は、艶やかに光って、石鹸の匂いがしている。

 僕は〈クルス〉の胸元を大きく広げて、上乳にキスマークをつけた。

 薄赤い花びらのような模様が、〈クルス〉のおっぱいに開いたと思う。


 「んんう、〈タロ〉様。またそんなことをして。もう終わりです。次は〈サトミ〉ちゃんですよ」


 パンツ一丁で、立っていると、僕の寝間着を持った〈サトミ〉がやってきた。


 「へへっ、良く見ると、〈タロ〉様の身体は、がっしりしているんだね」


 「もっと、すらっとしている方が良かった」


 「ううん。そのままの〈タロ〉様が、素敵だよ」


 「本当に」


 「あははっ、〈サトミ〉の本心だよ。嘘をついたりしないよ。それより、これを着せたいな。〈タロ〉様、手を上げて」


 〈サトミ〉は、バンザイした僕に、上からスッポリと寝間着を着せてくれた。


 「へへっ、お船から降りるまでは、〈タロ〉様をお世話してあげるね」


 「うん、どうし船に乗っている時は、僕の世話をするんだい」


 「ふっ、お姉ちゃんに、しごかれて心が削られるから、〈タロ〉様に触って、回復するんだよ」


 「はぁ、なぜ僕の触ると、回復するんだ」


 「うーん、三つくらい理由は、あると思うな。でもそんなこと、どうでも良いよ」


 〈サトミ〉は、そう言って、僕の首に手を回してきた。

 どうでも良いのに、回復はするのか。そんなのおかしいと思う。


 それと、「嘘をついたりしない」と言っておきながら、答えをはぐらかすのでは、何も意味がないぞ。


 でも、間近で揺れる〈サトミ〉のまつ毛を見たら、どうでも良いと思えてくる。

 僕は〈サトミ〉の唇や頬や鼻や、顔中にキスのシャワーを降らせた。

 〈サトミ〉は小さな声で「くすくす」と笑って、首を縮めている。


 「こらー、〈タロ〉様。くすぐったいよ。お返しするぞ」


 今度は〈サトミ〉が、僕の顔にキスのシャワーを降らせてきた。

 キスのために、少しすぼめた〈サトミ〉の唇が、とてもいじらしくて、泣きそうになる。

 自分でも、どうしてだか、理由は分からない。


 「〈タロ〉様、これで終わりにするね。また明日しようか。〈リク〉さんとお姉ちゃんも、水浴びをするから、もう出なくっちゃ」


 「えっ、〈リク〉と〈サヤ〉は、一緒に水浴びをするのか」


 「はぁ、〈タロ〉様はバカなの。一緒のわけないよ。〈リク〉さんには〈カリナ〉さんがいるし、お姉ちゃんは武道一筋なんだ」


 〈サトミ〉、バカは本当のことだけど、そこは、砂糖を少しまぶせよ。


 「武道一筋か」


 「そうなの。弱い男を見ると、イライラするらしいんだ。お姉ちゃんより強い人は、少ないのにね」


 「イライラするのか。怖いな」


 「〈タロ〉様は、強いって、お姉ちゃんは言ってたよ」


 〈サヤ〉に認められても、何にも嬉しくないな。反って怖いだけだ。



 次の日から、昼食の後は、許嫁達と守り刀の練習だ。


 〈リク〉と〈サヤ〉は、汗を撒き散らしながら、打ち合いを行っている。

 二人の闘志が、燃え上がっているようだ。暑苦しくて、理解不能で、近づきたくない。


 許嫁達も、僕と同じで、近づきたくないらしい。

 一番離れた、船の反対側で、コソコソ練習することにした。

 許嫁達と気持ちが、一つになれて嬉しいな。


 「〈サトミ〉が、この短い木刀で、〈タロ〉様を突いたら良いの」


 「そうだよ、〈サトミ〉。でも、適当で良いからな」


 〈アコ〉と〈クルス〉は、何回か練習しているから、いつも通り突いてきた。

 でも、真剣さはないので、その突きはヨロヨロだ。


 〈サトミ〉の突きは、運動神経が良いのか。幼少期に受けた稽古のせいか。

 そこそこ様になっている。でも、僕には当たらない。

 体格のハンデもあると思う。

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