第439話 暗い過去

 全身に痛みを感じながら、僕達は、何とか初日を終えた。


 昼食も、夕食も、満足に食べられなかったと思う。

 疲れて胃が受け付けないのと、身体中の痛みで手が思うように動かないんだ。

 明日は、酷い筋肉痛に襲われるだろう。


 これは、まごうことなく生命の危険に、僕達は晒されていると思われる。

 許嫁達も悲しい目を、僕に向けてきた。つぶらな瞳に奥に、狂おしい期待が灯っている。

 それで〈サヤ〉に、また今度も提案を行った。


 午前中は、鍛錬と練習を続けて、午後は〈サヤ〉と〈リク〉とで、鍛錬をするという案だ。

 僕と許嫁達は、午後も怠けたりはしない。精魂込めて、守り刀の練習を行うと申し出たんだ。


 〈サヤ〉は、二つ返事でこの案を受け入れてくれた。

 よほど〈リク〉と、鍛錬がしたかったのだろう。嬉しそうに「はい」って言ったよ。

 そうなら、初めからこうしろよと、思ったけど、黙っていた。

 沈黙は金なりだ、チ〇〇ンは、〇玉の隣だ。脳細胞も、筋肉痛になっているな。


 許嫁達に、このことを話したら、涙を流して喜んでくれた。

 つぶらな瞳に奥に、僕への感謝が輝いていたと思う。ピカーっとだ。


 「ふふふ、〈タロ〉様を信じていましたわ。〈タロ〉様は、頼りになる男です」


 「うふふ、〈タロ〉様に救われました。あのままでは、《ラング領》に着く前に、息絶えていたところです。本当のことですよ」


 「あはぁ、ホッとしたよ。〈タロ〉様、ありがとう。姉ちゃんは、武道のことになると、人が変わっちゃうんだ。怖いんだよ」


 「皆の役に立てて良かったよ。〈サトミ〉、〈サヤ〉は昔からこうなのか」


 「うん。そうなんだ。お父さんとお兄ちゃんと、三人で稽古ばっかりしてたよ」


 「そうか。大変だったな」


 「うん。大変だったよ。〈サトミ〉も、稽古に入らされるんだ」


 やっぱり暗い過去が、〈サトミ〉にはあったんだな。

 ある意味これは、虐待なんじゃないのか。兵士長は、何を考えていたんだ。

 稽古をつけることを、まさか、子育てと思っていたのか。救いようがない話だ。

 

 一番小さい〈サトミ〉は、ずっと辛かったと思う。

 「稽古に入らされる」って言い方が、三人からいいように、小突き回される感じが出てて、涙を誘うな。



 「〈タロ〉様、その話はもう止めようよ。それより、汗を流すんでしょう。背中を洗ってあげるね」


 「また、皆で入りましょう。真水を節約する必要がありますわ」


 「その通りです。船員さんは、海水しか使えないのですよ」


 僕は、また目隠しをされて、シャワー室に入った。


 「どうして、僕だけ目隠しなんだ」


 「当然ですわ。まだ、結婚はしていませんのよ」


 「もう、色々と見たから良いんじゃないか」


 「でも、最後の一線は見せません。私達は慎み深いのです」


 「へぇ、そうなの」


 「あっ、〈タロ〉様、その言い方は何なの。〈サトミ〉達を、いやらしい娘みたいに言わないでよ」


 許嫁達は、「プンプン」と文句を言いながらも、僕の背中を石鹸で洗ってくれる。

 狭い所へ四人も入っているから、もう密着状態だ。

 おっぱいも、太ももも、あそこも当たっている。少しジャリって、しているぞ。


 手で洗って貰っているのか、おっぱいで洗って貰っているのか、もう区別がつかない。

 天国の二歩手前だと思う。目隠しがなければ、一歩手前なんだがな。


 僕は元気になったあそこを、両手で隠している。はみ出てて、隠せているかは疑問だ。

 はっ、確実の間違いでした。見栄を張っていまして、すみません。

 手の面積は。確実に余っていると思います。


 「〈タロ〉様、手を退けてよ。洗えないわ」


 「えっ、ここは自分で洗うよ」


 「もう、散々(さんざん)見ましたので、隠しても遅いですよ」


 「えぇ、そうなの」


 「〈タロ〉様、上手く隠せてないんだ。場所が少し違うよ。〈サトミ〉の方からは、丸見えだよ」


 「えぇー、嘘だろう」


 僕は脇の下や乳首を洗われて、力が緩んだタイミングで、あそこも洗われた。

 それも三人同時にだ。


 我慢するのが必死だった。三人が見ている前で、爆発させるわけにはいかない。

 洗われているだけなのに出すのは、負けのような気がする。


 これは、鍛錬より辛いかも知れない。

 天国の気持ち良さだが、地獄のような時間だった。


 「もう、許してください」


 僕が泣くように頼んだら、やっと三人の手が止まった。

 三人は含み笑いをしてたけど、水で泡を流して、シャワーは終わった。

 僕は脱衣所に座り込んで、「はぁ」「はぁ」と荒い息をつくことしか出来ない。

 我慢するのが、必死だったんだ。


 その間に三人は、素早く身体を拭いて、服を着替えたらしい。

 〈クルス〉と〈サトミ〉は、どこかへ行って、今は〈アコ〉一人だ。


 「〈タロ〉様、目隠しを取りますね」


 〈アコ〉は、目隠しを取って僕をタオルで拭いてくれている。

 僕は〈アコ〉にされるがまま、身体を預けた。


 身体を拭いて貰うのは、すごく気持ちが良い。王侯貴族になった気分だ。

 あっ、僕は貴族なんだ。他の貴族は、メイドにやらしているのかな。

 こんなことをさせたら、直ぐにお手付きになっちゃうぞ。

 こんなの、とても我慢が出来ないと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る