清楚ビッチのクラスメイトを助けたら、お礼にもっといいことシてあ・げ・る♪と言われ、保健室に連れていかれた俺。どうなるかと思ったら、めちゃくちゃ尽されたんだけど……彼女は神ですか?
第50話 初耳の事実と思い出させてくれた記憶
第50話 初耳の事実と思い出させてくれた記憶
「あぁ……耳がまだムズムズする」
翌朝、俺は耳がふにゃふにゃな状態で、学校へと登校していた。
「おはよう雪谷君」
すると、後ろから声が掛けられる。
艶のある青みがかった黒髪に、整った顔立ちから溢れる清楚感。
短いスカート丈から伸びる太ももは、まさにムチムチパラダイス!
「おはよう、奥沢さん」
俺と仮の恋人関係を結んでいる奥沢さんは、眉根を顰めながらこちらを覗き込んでくる。
「どうしたの? 耳抑えてどうかした?」
「いや、何でもないよ。ちょっと痒かっただけ」
「ダメだよー定期的に耳かきしないとー。あっ、そうだ! 私がこの後耳かきしてあげようか?」
「いや、今日は遠慮しておくよ」
「えぇー」
不貞腐れたように頬を膨らませる奥沢さん。
見ているだけで可愛らしい。
「そう言えばさ、昨日雪谷君、沼部さんと大塚さんに引っ張られてたけど、何かあったの?」
「え⁉ あぁ……あはは……」
俺は苦笑いを浮かべることしか出来ない。
まさかあの後、カラオケルームに連れていかれ、両耳責めをされたなんて、言えるわけがないのだから。
「まあ、ちょっと色々あってな」
「そっかぁー。まあでも、なんだかんだであの二人仲直りしたんだね。良かった、良かった」
奥沢さんは、腕を後ろに組みながら、一件落着といった表情を浮かべていた。
そこでふと、俺は一つの疑問に思いつく。
「あれ? 奥沢さん、どうして黒亜と悠羽が喧嘩してたこと知ってるの?」
黒亜のことは、以前ばったり街で会ってしまった時に紹介したけど、悠羽と険悪な関係であることは知らないはず。
すると、奥沢さんがあっけらかんと言った様子で口を開いた。
「だって私、同じ中学だもん」
「えっ……えぇ⁉」
嘘だろ……?
俺と奥沢さんが、同じ中学だと⁉
驚きを隠せず、開いた口が塞がらない。
「あれっ……? 言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ。今初めて知った」
「そうだっけ? いやぁー中学生の頃はまだこんなに派手な格好してなかったし、内気な性格だったから、見覚えがないのも仕方ないかなぁー。それに、苗字も違ったからね」
「そ、そうだったんだ……」
恐らく奥沢さんは、中学時代垢抜けていなかったのだろう。
こんな美少女がいたら、絶対に気づかないはずがない。
「そう言えば雪谷君。あの頃は結構周りから人気者だったよね」
「えっ、そ、そうかな?」
「うん。私の周りにいる人でも、雪谷君の事気になってる子いたよ」
「マジか⁉」
俺の知らない所で、プチモテ期が来ていたとは……。
「そう言えば雪谷君、昔なんか変なものが下駄箱に入ってたって驚いていたこと合ったよね」
「えっ? そんなことあったっけ?」
「うん。あれは確か、大塚さんが越してからすぐの頃だったんじゃないかな……なんかUSBみたいなものが入ってたとか言ってたような気がするけど」
「⁉」
思い出した。
それは、黒亜がいなくなって、悠羽との関係性を決めた直後の出来事だった。
三年前。
俺は久しぶりに部活動にも参加して、いつも通りの生活へと戻ろうとしていた。
「ん? なんだこれ?」
すると帰り際、昇降口の自分の靴箱を開くと、そこには一通の封筒が入っていた。
中を覗いてみると、何やら黒いものが見えた。
取り出してみると、掌に乗っかったのはUSBメモリだった。
「……なんだこれ?」
「おーい雪谷。どうした?」
「いや、なんかUSBみたいなのが入っててさ。なんだろうと思って」
封筒の裏を覗き込んでみても、宛先は書いていない。
「んだこれ? なんかエロイデータでも入ってるんじゃねーの?」
「なわけないだろ」
「いや、分かんねぇぞ? まっ、ウイルスが入ってたとしたらドンマイだけどな」
「お、脅かすのはよしてくれよ」
「あははっ、ほら帰ろうぜ」
「おう」
そうして帰宅してから、俺はノートPCを開いてUSBを恐る恐る差し込んだ。
すると、特にウイルスに感染した形跡はなく、ファイルフォルダが開かれる。
見れば、mp3ファイルデータが入っていた。
どうやら音声データのようだ。
そのファイルをダブルクリックすると、音声再生アプリが開き、しばらくして、自動で音声が再生される。
『雪谷君……最近色んなことがあって落ち込んでるかもしれないけど、元気出してね。大好きだよ……愛してる』
そう小声で囁かれた音声は、それで再生が終わってしまう。
「これは……いわゆる、音声ラブレターってこと?」
なんという最新テクノロジーを使った技術。
けれど、音声内で名前の述べられていないので、誰からの告白なのかもまるで分からない。
俺はもう一度再生ボタンをタップして、音声を聞いてみる。
「この声、どこかで聞いたことがあるような気が……」
既視感のある声、俺は眉間にしわを寄せながら記憶を辿ってみるものの、顔は思い浮かばない。
「もう一度聞いてみるか」
もしかしたら、このメッセージをくれた女の子は、声だけで正体を暴いて欲しいのかもしれない。
それなら、期待に応えられるよう、俺が頑張らなければならない。
そう意気込んでみるものの、結局見つけ出すことは出来ず、真相は闇の中で終わったという出来事があったのだ。
「……」
「雪谷君、どうかしたの?」
「! あっ、ごめん、ちょっと考え事してた」
「どうしたの? 変な雪谷君」
「ごめん、ごめん」
そこから、話題は逸れて、奥沢さんと他愛のない話をしながら学校へと向かっていく。
俺は心の内で、帰ったら例のUSBを探し出して、久しぶりに聞き直してみようと思うのであった。
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