第30話 媚薬を抜くには出すのが一番

「……王太子……殿下」

「婦女暴行は禁固刑だ」

「いや、これは違うんです!俺……いえ私こそこの女に暴行をふるわれ」

「下半身丸出しでは説得力がないぞ」


 男は慌ててズボンを引き上げ、アダムの前に懇願するように膝をつく。


「恋人との逢瀬をそこの女に邪魔されたばかりか、大切な場所を蹴られたんです。これで子だねがなくなるようなことがあれば、我が伯爵家存続の危機。そこの女を罰することがあっても、私を婦女暴行などで禁固刑にするなんてあんまりと言うもの。私は被害者なんですから」

「確かに、女性と致してるとこに突っ込んじゃったのは私だよ。それで女の人に逃げられたから責任とれって、おっぱい揉んできたから、股間蹴り上げただけだもん。正当防衛です!」

「おっ……」


 アダムはマジマジと私の胸を見、さらに私の顔を見、それを何度も繰り返す。どうやら、私の声で私だと気がついたようだ。眼鏡もどっかいっちゃったしね。


 だから、パッドですから。


「……触ったのか」


 アダムの声がワントーン低くなる。


「ガッツリ揉んだね(パッドだけどさ)」

「衣服が破けているのは?」

「この人にやられた」


 私が男を指差す。

 袖破いたのは男だし、スカートが破けたのは男が乗ってたからだもんね。


 アダムは騎士団の制服を脱ぐと、私に羽織らせてボタンをきっちりと上までしめた。しかしかなり大きくて、袖から手は出ないし、膝上十センチくらいまで裾がきてしまう。


「クッ……可愛い」


 アダムの赤らんだ目元がさらに赤らむ。なんか、息も荒いような……って、媚薬飲んじゃってるからじゃん。


「アダム、アダム、こいつはどうでもいいから、ちょっとこっち来て」


 アダムの袖をひいて、ヒソヒソ声で囁く。さらに、男から離れて二人になれるところに行かなくてはと、アダムの腕をグイグイ引っ張る。


「おまえ、顔は覚えたからな。絶対に有罪だ!」


 アダムは男に言い放つと、私に引っ張られるままに歩き、迷路を先に進みだした。


「そういえばミシュアは?」

「ミシュア?なぜロッティが彼女を知ってる……というか、そのかっこうはなんだ?」

「まぁ、それには深い理由がね。それは後で話すから。で、ミシュアはどこ?彼女に媚薬盛られたんでしょ」


 アダムは眉をひそめるが、目が潤んで色気マシマシの今のアダムでは、ただ艶めいて見えるだけだ。


「この迷宮に入ってまいてきた。あれはやはり媚薬だったのか。口に含んで飲み込まずにハンカチに出したんだが、少し口に残ったのを飲み込んでしまったようだ」

「そのハンカチある?」


 アダムは私が着ている制服を指差した。ポケットを漁ると、確かに濡れたハンカチが入っていた。少量でも効果がでているようだから、かなり強い媚薬なんだろう。


 私は臭いを嗅いでからハンカチをペロリと舐めてみた。


「ロッティ!」

「大丈夫よ。これくらいなら全然効かないから」


 アダムは時間もたったせいか、汗も出てきてかなり媚薬効果が表れてきたらしい。息も切れて、なんだか艶めかしさがグングン上がってきた。ちょうどその時、迷路が途切れて小離宮にたどり着いた。


「ほら、中に入るよ。とりあえず媚薬を少しでも抜かないと」

「媚薬を抜くって?」

「とりあえず、出すのが一番じゃない?」


 AV撮影でも、たまに媚薬を使うことがあったんだけど、あれって無茶苦茶気持ちいいんだよね。下手な相手でも何回でもイケちゃう優れもの。あれを抜くには、沢山水分とって出すもの出すのが一番だよね。


「出す……って」


 アダムがゴクリの唾を飲む。

 アダムの背中を押して小離宮に入り込んだ。お茶会がされる離宮だから、水回りはしっかりあると思っていたが、やはりちゃんと調理場があり、そこには井戸もあった。


「とにかく水分とって薄めようか」

「そうだな」


 アダムは手押しの井戸から直に水を飲んだ。うん、ワイルドで素敵。


「後は出すだけね」


 私はアダムが着せてくれた騎士団の制服のボタンをプチプチと外していき、制服を脱いで椅子にかけた。


「ロッティ……」


 襟首まで詰まった侍女服の前ボタンを外していく。アダムの視線は私の胸元に釘付けだ。偽物だけどね。

 私はブラのパッドの中から粉薬を取り出した。さっき舐めた媚薬は、残念ながら私の知らない味のものだった。しかし、それならそれでやり方はあるのさ。


 なんで媚薬の味なんか知ってるかって?それはニングスキーの馬鹿王子のおかげ(?)。あの馬鹿王子、ティアラにけっこうな割合いで媚薬を仕込んできたのよ。それを阻止する為に私がわざと飲んだりしたから。もちろん、口をつけるふりしてほとんどこぼしていたけど、少し口に入ることもあって、最初にえらい目にあったから、一時期色々研究もしたのよ。


「アダム、これを飲んで」

「これは?」

「おしっこに半端なくいきたくなる薬と、無茶苦茶汗をかく薬、あとは肝臓に優しい薬。で、水飲みながらトイレにこもってね。もちろん、おしっこ以外のものも出さなきゃ駄目よ。なんならお手伝いしましょうか?」


 私がナニを扱く手つきをすると、アダムは真っ赤になって私から薬を取り上げると、全部まとめて口に入れた。


「あ!ほら、水!」


 水さしに水を入れたものを渡すと、アダムはいっきにゴクゴクと飲み干す。


「……ヤバイ、死ぬかと思った」

「良薬は口に苦いのよ」


 それからアダムはトイレにこもり、私は心配だからその前で待機する。

 媚薬の抜き方なんか、一番はセックスすることに決まってるんだけど、女性恐怖症になった経緯が経緯だから、そういう行為に……しかも媚薬を使って無理やり発情させるような行為じゃよけいアダムの心の傷を抉るんじゃないかなって思ったんだよね。


 少し媚薬を舐めたからか、それともアダムの艶っぽい吐息と、色々な音が聞こえるせいか、私の子宮もウズウズしてくる。


 十四年間欲求不満をためた私には、かなり地獄のような時間になった。







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