第8話 護衛騎士を紹介されました。
気がついたら朝だった……。
昨日、いざ新婚初夜!と張り切って、栄養つける為に夕飯を沢山食べ、再度入浴して身体を清め、アダムをベッドに引きずりこんだのは良いのだが、そっからの記憶がスコンとない。
ま、疲れてたしねー。まだこれからいくらだって時間はあるもん!
目指せ!めくるめく官能の世界!
私がウーンと伸びをすると、朝食中だったアダムとバッチリ目があった。
「おっはよーございまーす」
「おはよう」
アダムはちゃんと着替えをすませ、なぜか寝室で朝食をとっていた。アダムって実はズボラ君?
実際にはあまりに私の寝相が悪くて、いつベッドから落ちるかとハラハラした為、私が起きるまで心配で部屋を出れなかったのだ。マリアに言って朝食を寝室に運ばせ、私から目を離さずにいたんだって。乙女の寝姿を視姦していたなんて……エッチね。
「ね、ね、それ美味しそう。私も食べたい。食堂行ってもらってくる」
「ちょ……ちょっと待った」
「うん?」
部屋を飛び出そうとした私の腕を、アダムは慌てて掴んだ。
「その格好でどこに行くんだよ」
「厨房?食堂?ご飯が食べれるところ……って、一階だよね?夕飯食べたとこでいいの?」
「いや、あれは晩餐の間。朝食は朝食の間がある。あるけど、その格好で寝室から出たらまずいだろう。うちはほとんど従者しかいないんだから」
そう、この宮は男だらけの逆ハーレムだった。
私は自分の姿を見下ろした。もちろん起きたばかりたから、寝間着姿ではあるけれど、ママリンからの厳命できっちりと首元までしまったロングの寝間着に、しっかりズボンまで履いている。なぜって、私の寝相がすこぶる悪いから。本当は初夜だからお色気ムンムンのベビードールとか着たいところだったんだけど、この体型じゃ似合わないし、女嫌いのアダムを下手に刺激するのは悪手だと思ったし……何よりお腹冷えるじゃん!
だから、寝間着だけど防御力は高いのよ。
「ちょこっとご飯貰ってくるだけだよ」
「ちょこっとも駄目だろ。いいよ、僕がとってくる。ロッティは着替えてなよ」
「あ、本当?ありがとう!」
なんて優しい旦那様だろう。これでアッチも最高なら言うことないよね。
アダムが朝食を持ってきてくれる間、私は持ってきていた簡単なドレスに着替えて、顔を洗って爆発してる髪の毛に櫛を通す。今まではティアラがやってくれていたからな、上手くできる気がしない。ちなみに旅の間は見かねたイーサンが三つ編みにしてくれていた。自分でやるとさ、あっちこっち絡まっちゃって収集つかなくなるんだよね。
なんとか髪の毛を二つ結びにしてみたものの、微妙に高さが違うのはご愛嬌だ。そうこうしているとアダムが寝室に帰ってきて、私を見て一言。
「なんか、凄いな」
朝食の乗ったトレーを王太子自ら運んでくるとか、リズパイン王国はうちとは比べ物にならないくらいの大国の癖に、動ける者は王でも使えがモットーのうちの国みたいな一面もあるのかな。
「え?何が?ウワッ!朝からゴージャスじゃん。朝から肉料理とか、どんだけ性欲つけさせたいんだっての」
「いや、肉料理も魚料理もあったけど、ロッティはなんとなく肉のイメージで」
「アハハハ、肉食系ってか。大当たりよ」
テーブルについて二人でいただきますをする。先に食べ始めていたアダムは早々に食べ終わり、私が食べるのを見て……というか視線は私の頭だね。
「そんなに変?この髪の毛、凄いくせ毛で絡まりやすいの」
「ちょっと梳かさせてもらっていい?」
「お好きにどうぞ。でも絡まったら丁寧に梳かしてね」
私がお肉をモグモグと食べていると、アダムは私の背後に回って丁寧に櫛を通し、緩い編み込みを編んでいく。髪の房を指ですくわれる度に、身体がゾクゾクしちゃう。頭にも性感帯があるのね。
私がお肉を食べきるのと、アダムが髪の毛を結い終わるのとほぼ同時だった。
手鏡を渡されて出来をチェックしてみたらビックリした。
「凄くない?髪結いの侍女になれるよ」
「まぁ、いつもいも(妹の髪の毛を結んでいたから)……いや、そうかな?」
いつも芋?美味しいお芋なの?
アダムは食べ終わった食器をワゴンにうつして廊下に出した。
やっぱり王太子にしてはよく動くな。威張り腐っていたニングスキーの王太子とは正反対で好感度は高いけど、王太子らしい王太子といえばニングスキーの方かもしれないね。あんなんじゃなくて本当に良かった。
「アダム様の今日の予定は?」
「今日は視察だな。夕方には戻るよ」
「私は何かやることある?」
「そうだな……。勉強してもらわないといけないこともあるだろうけど、まだ教師の手配もできてないし、とりあえず少しの間は旅の疲れをとるといいよ」
ゲッ!勉強か。勉強嫌いなんだよな。まぁ今すぐじゃないしいっか。
「この宮以外にも見て回ってもいいの?」
「うーん、王と妃達の住まいと後宮以外なら基本入ったらいけない場所はないけど、迷子にならないかな。……そうだ、とりあえず侍女を……ってマリアは無理か。あまり歩かせるのもな。でも侍従をつけるのも何言われるかわからないし……」
誰に何を言われるんだろう?まぁ、女性には侍女が、男性には侍従がつくのが当たり前だからかな。
アダムが考えている間、私は椅子に座って足をプラプラさせて待っていると、扉がノックされてイーサンが顔を出した。今日は肩の所に金色の房のついた紺色の騎士服を着て、腰には剣を下げた仕事仕様の格好をしていた。
「殿下、そろそろ視察の時間だ」
「あぁ、イーサンおはよう」
「おはようさん。シャーロット殿……いや昨日付けで王太子妃殿下か……もおはよう」
「おはよう。昨日の書類受理されたんだね」
「あぁ、結婚式やお披露目はまだ決まってないけどな。そうだ、王太子妃殿下の護衛騎士も連れてきた。紹介したいのだがいいか?イーデル入れ」
護衛騎士?
もしかして、筋肉ムキムキの精力絶倫系?!
「失礼します」と部屋に入ってきたのは、短髪の赤毛にキリリと涼やかな茶色の瞳、美形ではあるけれど……胸がある。発達した胸筋じゃないよ、おっぱいだよ。
女かぁー。
ちょっと残念な感じが表情に出ていたのか、イーサンが苦笑しながら護衛騎士を私の前に立たせた。
「ロザリー・イーデル。男爵令嬢だ」
「ロザリー・イーデル、十八歳です。よろしくお願いいたします。リズパイン王国騎士団第一騎士団所属、階級は中隊長補佐官です。王太子妃殿下の護衛騎士を拝命されて光栄に存じます」
イーサンから旅の途中に聞いたのだが、騎士団は第一から第四まであり、第一は王族警護・王宮警ら、第二は王都警ら、第三が諜報活動、第四が辺境警らだった気がする。騎士団は五大隊に別れ、大隊はさらに十の中隊に別れ、中隊はさらに細かい小隊にわかれると聞いた。十八歳で中隊長補佐官だったらかなり出世株ではないだろうか。しかも女性で。そう女性なんだよね、アダムは大丈夫なんだろうか?
私がチラリとアダムを見てみると、アダムは女性が近寄ってきて緊張しているのか、表情が無になっていた。
「殿下、まぁそんなに警戒するな。イーデルは大丈夫だ」
「大丈夫って?どういう意味で?」
「まぁ……色々とだよ。さぁ、視察に行かないとだな」
色々と……の意味は後で知ったのだが、ロザリーの恋愛対象は同性ということで、しかも人目を忍ぶ恋人がいるからアダムはもちろん私にも色仕掛をするようなことはない……という意味での色々だったらしい。
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