第14話 鏡に映る謎の男

「家の中を説明する前にお風呂にしましょうか」

「「「お風呂!」」」



 リビングのお風呂と聞いて女の子達は赤い顔で喜んでいる。



「(ブツブツ)トーマ様とお風呂お風呂お風呂……」


「(ボソボソ)ま、まだ、見せるには胸の発育がたりて無えんだよな……」


「(ヒソヒソ)お、お兄様とお風呂……、きょ、兄弟だから、い、いいのかな……」



 何故だか皆んなモジモジしているのは、靴下を脱ぐのが恥ずかしいからだろうか?



「俺がお風呂にお湯を張ってくるから待ってて下さい」

「お、お兄様、私も手伝うよ」

「……シルフィが?」


 今まで俺と一緒にいる事を嫌っていたシルフィが、どうした事だ?


「シルフィ……熱でも有るのか?」

「な、無いわよ! ふ、二人でやった方が早いからそれだけよ!」


「いや、しかし顔が赤いぞ? やっぱり熱が――」


「無いわよ! ほら、行くわよ!」


 プンプンとした態度はいつものシルフィだ。まぁ、風邪とかひいても聖神のルミアーナ様がいるから大丈夫か。



「えっ!? 誰だコイツは!?」


 お風呂の湯を張りに脱衣場に入った俺は、正面にある洗面台の鏡を見てビビった。そこには端正な顔立ちの好青年が映っていたからだ。


「俺か! 俺なのか!?」


 いやいや、錬聖のスキルを取得した時に体が軽く感じたが、いやいや、まさかの好青年に変身しているとは思わなかった。


「シルフィ! 俺、もうキモデブじゃないよな!」

「う、うん……」


「いやぁ、こっちの世界にきた時には、お相撲さんみたいな体型で、どうなる事かと思っていたんだ。いやぁ、良かった、良かった」

「う、うん……」


「シルフィ……、本当に大丈夫か? 顔が赤いぞ?」


 またシルフィの顔が赤くなっている。俺はシルフィの額に手を当てて熱がないか確認した。


「ちょっ、お、お兄様!?」

「あっ、ごめん。俺に触られるの、嫌だったんだよな。でも、熱は無さそうだな」


 シルフィの額から手を放す。


「あっ……」

「どうしたシルフィ?」

「な、何でもないわよ!」


 シルフィの顔が一瞬曇ったように見えたのは気のせいか?


「ほら、お風呂にお湯を張るんでしょ」

「お、おお、そうだった」


 バスルームの扉を開けてシルフィと二人で中に入る。錬聖で家を作った時に全体を1.5倍ていど広くしている。バスタブも二、三人で入れる程度には広い。


「ねえ、お兄様、アレは何?」

「アレはシャワーだな。先端の丸い所から雨みたいにお湯や水が出るんだ」


「へえー、使ってみたいな」

「今は水道がないから無理だな。上水道と下水道はさっさと作らないとだな」


 上水道はともかく下水道は必須だよな。俺も含めて汚物処理は誰もしたくない。


「さて、バスタブにお湯を張ろう」

「お兄様、水魔法が使えたの?」

「いや、『スキルメイク』で生活魔法だけ覚えた」


 俺とシルフィで並んでバスタブにお湯を張り、湯船が一杯になった。


 そしてリビングに戻ってみると、ルミアーナ様とクスノハ様はソファーに座って二人寄りかかって眠りについていた。


「あらま、寢ちゃってるね。シルフィ、先に入れば?」

「あ、いえ、お兄様からどうぞ」

「俺は残り湯でいいよ」

「……それって、嫌らしいよね」

「…………かも。じゃあ、先に入るよ」


 美少女三人の残り湯は、確かに旨い……じゃない! ヤバいだ!



「ふぅ〜、極楽だな」


 男爵家を出て三日。道中にお風呂がある宿屋はあったのだが、俺の巨体だとお湯が無くなるからと断られる、体を拭う程度しか出来なかった。


 俺の錬聖で作った家には生物なまものや植物以外は、ほぼ家にあった物が再現されていた。


 だから風呂場にはポンプ式のボディソープに洗顔ソープ、シャンプーにコンディショナーが備わっていた。


 因みに錬聖は造形系スキルである以上、錬金術同様に生物せいぶつや植物は作り出す事は出来ない。


 現世のハイクオリティな石鹸で全身を洗い汚れを落として湯船に浸かった。


「しかし、錬聖は凄いな。石鹸や電化製品なんかも作れちゃうのか。そうしたら車やスマホなんかも作れるのか? スマホは電波やアプリは流石に無理かな」


 などなどを考えていると、脱衣場で物音がした。


「お兄様……す、少し……お、お話があります」


 それはシルフィの声だった。


 てっ、はいっ!?


 シルフィが裸に白いバスタオルを巻いて、風呂場に入ってきた!?


 

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