第27話 王女と勇者の悩み(三人称視点)

 ◆王城◆



「はぁ…………」


「姫様。また溜息が出ておりますよ?」


「ミーナ。聞いてよ~」


「…………またでございますか?」


「……うん」


 王女は親友でありながらメイドでもあるミーナに寄りかかる。


「この前の薬も効きませんでしたよね?」


「そうね。王国内で一番強い淫薬・・でも全く効き目がなかったわ」


「でも姫様効かなかったんでしょう?」


「そうなのよ!」


 勇者を連れて来たその日から、全くの性的な興奮を得られなくなった王女と勇者。


 一か月以上同じ部屋で生活していたのに、一度も起たなかった。


 さらに自分も全く反応がない。


 話を聞くと、元々起たない体質ではなく、寧ろ性欲は強い方だった・・・と聞く。


 だから王女はその病気を治すために淫薬を試して見た。


 結果は、全く効かない。


 自分も飲んでみたものの、全く反応を見せない。


 親友でもあったミーナに試した時、凄まじい効果があったので、淫薬が偽物ではないのは検証出来た。



 次に試したのは、効果が絶大な『お守り』である。


「『お守り』でもダメだったんですか?」


「そうなの! あのヴィクトリア様が作られた『お守り』なのに!」


「…………今回は私に試さないでくださいよ!」


「そこまではしないわよ」


「はぁ……」


 淫薬で酷い目にあったミーナが胸を撫で下ろす。




 その時。


 とある人が部屋に入って来る。


 忍び足で入って来るが、彼らの正体をしっていた二人は不思議がりながらも彼らを受け入れる。


 そして、彼らからとんでもない事を言い渡された。




 ◇




 ◆暗黒の森◆



「う、うわああああ!」


 目の前の魔物に尻餅をつく勇者。


 直後、後方から鋭い剣戟が魔物を斬った。


「勇者が聞いて呆れる……」


「…………」


「おい! 勇者を介護してやれ」


 女騎士の言葉で周りの兵士達からクスクスと笑い声があがる。


 全く余裕がないクレイは笑われる中、必死に立ち上がり逃げるかのように森をあとにした。




「…………くそ! どうして俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ!」


 クレイは持っていた木製コップを投げつける。


 全ては王国に辿り着いてから――――いや、勇者を目覚めたあの日から全て思うようにいかなくなった。


 勇者を目覚めて、真っ先に王城に向かって、勇者の力を見せつけて、王女に気に入られるまでは順調だった。


 あの目障りだったベリアルをボコボコにするまでは本当に楽しい人生だった。


 あの日の夜から全てが変わってしまった…………。


「ベリアル………………?」


 何故かクレイの頭にこびりついて離れないのは、ベリアルの名だ。


 その時、テントの中に女騎士団長が入って来る。


「クレイ。お前は勇者でありながら、魔物とまともに戦えない。一度王城に戻る」


「……はい」


「このままでは魔王はおろか、魔物一体すら倒せないぞ」


「…………分かっています。スカーレットさん」


「なんだ?」


「一つ聞きたい事があるんですが……」


「?」


「…………周りが笑う中、貴方だけが俺に真剣に向き合ってくれました。だから貴方にだけ打ち明けます」


「打ち明ける……?」


 テントが閉まっているのを確認して、スカーレットの前で服を脱ぐクレイ。


「…………私を侮辱するつもりか?」


「いえ。これを見てください」


「…………切られたいのか?」


 剣の柄に手を掛ける騎士団長。


「違うんです! 信じて欲しいんですけど…………スカーレットさんのような美人さんの前でも、王女様のような美人さんでも、いや、美人関係なく、どんな時も、もう起たない・・・・んです!」


「…………?」


「王城に来た日から、起たなくなったんです。これは女性を前にしての事でもなく、毎日、どんな状況でも、寝ている間も、朝起きても、俺のはもう起たないんです!」


「…………」


 脱いだ服を着るクレイ。


「一人だけ、思い当たる節があります」


「なん……だと?」


「もしかしたら、俺にこの呪い・・を掛けたんじゃないかなと思える奴が、一人いるんです」


「ほぉ……?」


「ですから、王城に帰ったら、一緒にそいつを問い詰めて欲しいんです!」


「…………いいだろう。お前が勇者として立ち上がれるなら、私も手伝おう。そいつについて話せ」


「はい…………」


 クレイは嘘偽りなく、全てをスカーレットに話した。


 直後、怒りに狂うスカーレットにクレイはボコボコにされた。



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