他にいい人いる

くぬぎ、俺なんてよくないよ。もっといい人いるよ。」


そう言って美咲さんは、椚さんの頭を撫でる。


「ワイン美味しい。美咲さん、俺は、そんな話聞きませんから」


そう言って椚さんは、ワインを飲んでる。


「まだ、若いんだから」


「何ですか、それ?そんなの聞きませんから」


そう言って椚さんは、笑ってる。


「何年ですか?椎名さんを好きなの、何年ですか?」


「知ってどうするの?」


「知りたいんです。」


「10年だよ。」


「お店と同じですね。だったら、俺も後三年思ってたら、今の美咲さんの気持ちに辿り着けますね。」


嬉しそうに、ニコニコしながら椚さんは、またワインを飲んでる。


「俺、明日から暫く休むかもって言ったらどうする?」


「美咲さんは、休みませんよ」


そう言って美咲さんに笑いかけてる。


「なんで、そう思うの?」


「だって、俺がいるから!美咲さんには、俺がいる。あの場所にいるのは、椎名さんだけじゃないですよ」


そう言って椚さんは、笑った。


「俺は、椚を利用してるだけだよ。」


「利用したらいいじゃないですか?してくれるなら俺は、何度だって美咲さんに告白できるから嬉しいです。」


そう言って笑ってる。


「馬鹿じゃないのか、椚。」


「馬鹿ですよ、俺は。」


「くぬりんのケーキ食べたい」


「華君、材料ないから無理だよ。」


「買いに行こう。オーブンあったから」


「ええ、美咲さんと居たいのに」


「いいじゃん、晴海も行こうよ」


「わかった。用意する」


「ね、くぬりん」


そう言われて、椚さんは立ち上がった。


「じゃあ、ちょっとケーキの材料買ってきます。」


「気をつけて」


華君と晴海君と椚さんは、ケーキの材料を買いに行った。


「ケーキ楽しみだね」


「うん」


「美咲さん、大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ。」


そう言ってワインを飲んでる。


「美咲さん、もしかして椚さんにひかれてます?」


僕の言葉に、美咲さんは驚いた顔をした。


「やっぱり、そうですか」


「何でかな?しーちゃんにフラれて弱ってるからだよね。椚といるのが楽しい。」


「真っ直ぐだからじゃないですか?」


るいの言葉に美咲さんは柔らかい笑顔を浮かべる。


「あんなにストレートに言われたら、弱ってるとささるよね。」


そう言って笑ってる。


「詩音、俺は、椚さんみたいな人はなかなかいないと思うよ」


月が笑って言った。


「わかってる。だから、迷ってるんだ。」


そう言って、ワインを飲んだ。


月は、キッチンにワインを取りに行った。


「美咲さん、僕は、椚さん好きです。すごくストレートな表現がよかったです。」


「だよね。椚の良いところだと思ってる。裏表がない。思ってる事を話してくれる。さっき、俺の話に泣いたのを見て少しドキッとしちゃったかな。華や晴海みたいにしか思ってなかったのに」


そう言って美咲さんは笑ってる。


「僕は、いいと思いますよ。あんなに愛されるなんて、幸せな事だと思います。少なくとも、キスしたら忘れてっていう人よりは。」


「そうだね。あんなストレートに俺に気持ちをぶつけてくる人は、椚が初めてだから。正直戸惑ってる。いや、ずっと前からかもしれない。あんな、純粋な子を駄目だよねって思ってる。」


美咲さんは、眉を寄せて悩んでる。


「それでも、今は椚さんと居て救われるならいいんじゃないですか?」


「そうかな」


美咲さんは、目を伏せて考えてる。


「全部話してみたらどうですか?明日は、夜からなんですよね?」


「ああ、そうだよ。」


「だったら、椎名さんとの話。みんなが寝た後でも話してみたらどうですか?」


月がワインを持って、戻ってきた。


「華君と晴海君は、俺達どちらかの部屋で寝てもらうから…。話した方がいいですよ。」


「全部話すのは、怖いからいいよ。椚を利用してしまう自分も怖いから…。」


「でも、少しだけ向き合って欲しいです。椚さんの為にも…。」


「じゃあ、華と晴海が寝たら二人が一緒に居てよ。椚に話してみるから」


そう言って、美咲さんは僕の頭を撫でてくれた。


ガチャって、玄関の扉が開いた。




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