59 俳句(夏)



 あさがほや子らのかけてく遠い声


<読み>

あさがほや こらのかけてく とほいこゑ




夏休みまっさかりですね。

もはや夏休みとは縁がないという方も、あるいは逆に、夏休みのおかげで忙しさが倍増でもういやっ!という方もおられるかもしれませんが、おそらくほとんどすべての人にとってかつておおいなる楽しみだったであろう夏休み。


なかにはお孫さんがやってくるのを楽しみにしている方もいらっしゃるでしょう。ありあまるエネルギーで家じゅうひっかきまわして、朝から山へ海へと駆けだしていくのを見送るとき、毎年成長していく姿に目を細めながらも、ふと感じる寂しさ。


いまのこの一瞬を永遠にしたいのに、それは決して叶うことのない望みです。

時の流れは残酷で、心だけがいつまでも過去の瞬間に残される――そんな、楽しさのなかにほんの一滴にじんだ苦さを、子供たちが去ったあとの朝顔に託しました。


孫の夏休みを見守りながら、遠い日の、自身の夏休み、子の夏休みに思いを馳せることもあるかもしれません。旧仮名遣いにしたのは、そんなセピア色の郷愁を感じていただければ、という(ちょっと小賢しい)作戦です。



ところで「朝顔」は、秋の季語なんだそうです。

夏休みの風物詩である(といってよいと思うのです)朝顔ですが、旧暦で考えるとたしかに今はもうそろそろ秋。

でも私は、現代に生きている以上、新暦の季節感で俳句をつくる方が好きです。(べつにつよく主張したいわけでも、決まりごとを否定したいわけでもないですけどね)

というわけで、その道の方にはお叱りを受けるかもしれませんが、これは夏の句、ということでひとつよろしくお願いします。


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