55 旋頭歌



連載開始して1年が過ぎました。ここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございます。


詩の修行もそろそろ幅を拡げて、ちがったスタイルの歌にもチャレンジしてよい頃合いなのでは――と、試みにつくってみました。つくったら発表したくなるのが物書きの習性というもの(たぶん)。なにぶん修行中なので、ここに出すのはおこがましいような、習作レベルのものではありますが、、お付き合いくださいましたら幸いです。


まずは旋頭歌せどうか。五・七・七・五・七・七の歌です。




 渓あいにその木の花はひそと咲くとゆ

 黄な花をきず負う熊はひとり見たとゆ


<読み>

たにあいに そのこのはなは ひそとさくとゆ

きなはなを きずおうくまは ひとりみたとゆ


(最後の「ゆ」は「う」をつづめたものです。古文なら「とふ」を「てふ」とか「とふ」と約めるところですが、現代文ならこうするのがいいかな、と)



どうしてこんなリズムの歌が出てきたのか、勝手な解釈をすると・・・

・長歌は、五・七が2回以上 +最後に五・七・七。

・短歌は、五・七が1回 +最後に五・七・七。

・片歌は(そう呼ぶんだそうです)、五・七が0回で、五・七・七だけ。

・で、片歌を2回繰り返したのが、旋頭歌です。


ならば、ひとつ目の五・七・七と、ふたつ目の五・七・七とが、対句のようになるのが期待される姿なんだろうと思います。

問答の形で掛け合いしたり、恋人ふたりが互いに愛をささやきあったり。あるいはほとんど同じ言葉を繰り返してみるだとか。

それからすると、上の歌は、遊びがすこし物足りないかも。



旋頭歌は万葉集には幾つか採録されていますが、その後はまず見かけませんので、廃れてしまったようです。やっぱり短歌のリズムの心地よさには敵わない、、ということをあらためて思い知りますね。


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