41 短歌



 春されば花の京の人を多み

      さくら見る児らここからご覧


<読み>

はるされば はなのみやこの ひとをたみ さくらみるこら ここからごらん




突然ですが問題です。

上の読みで、文法的には誤りとすべき振り仮名があります。さてどこでしょう?




答えは、「み」。

おそらく本来「おおみ(おほみ)」とするべきです。

でも、音の感じは「たみ」の方がいい。ので、これで押し通すことにしました。


なお、「人をみ」なら、よく使われます。意味は、「人がいないから」。

それと同じ響きで「人をみ」としたわけです。意味は、「人が多いから」。

(「人をおほみ」→「人をみ」ぐらいに読むのが本来で、それはそれで悪くない響きだと思いますが)


私は、散文でも、音の響きを意味より優先させがちな傾向があります。ここでは文法をも無視してしまいました。

これはやっぱり邪道でしょうか。それとも、物書きなら普通にあることなのでしょうか? 私はこのぐらいあってもいいと思いますが、「こいつ間違ってやがる。こんなの読む価値なし」なんてそっぽを向かれるリスク大ではありますね。


意味だけ追うような読み方だと、あんまり関係ない話かもしれません。

読むとき私はたいてい頭のなかで音にしながら読むので、響きが気になるのです。

※ 意味だけ追うのが悪いということではありません。それに、響きがどうであろうと、含蓄に富んだ文章が心地よいのは勿論です。



さて。

音の響きということでは、下の句の音をこの歌では意識しましたが、感じられたでしょうか。

「ら」を頻出させることで、音が心地よく響くようにしたつもりです。


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