33 漢詩



 羈中玄冬到

 連山如波濤

 寒風浚峻巌

 雪素粧孤堂


<読み下し>

羈中きちゅうにも玄冬は到り

連山は波濤の如し

寒風は峻巌をあら

雪のしろは孤堂をよそ


<現代語訳>

旅の空にも冬は来る

山は雪を冠して波のように連なりうねる

そのけわしいいわおを寒風が吹き過ぎる

山中に佇むお堂が、白く雪化粧している




暦は立春を過ぎましたが、実感としてはまだまだ冬。日々、雪景色を見る人も多いのではないでしょうか。

私の場合は日常生活ではあまり雪を見ませんが、スキー場目指して雪の山道を旅ゆくことが、たまにあります。

朝日を受け輝く峰々、風にたわむ樹の枝、山腹にしがみつくように立つ寂れたお寺……。そんな光景を見ていると、スキーへの期待に胸が膨らむ一方で、寒々しい旅愁を感じたりすることも。

(日帰りか、せいぜい一泊の旅なのに)あの感情は、なんなんでしょうね。



※ 「羈」は、馬のおもがい、或いは轡。また、馬の手綱を牽くこと。転じて、旅そのものや、旅人を指すこともあります。

※ 「素」は染色される前の白糸。敷衍されて、色が白いこと、飾りけがないこと、元となるもの、等、多くの意味をもつ。ここでは、「冬」を意識して対置しました。

……ところで蛇足ですが、素を「す」と読むのは訓読みではなく、音読みなのだと、ご存知でしたか?(「そ」が漢音、「す」は呉音)。初めて知ったとき、私にはちょっとした衝撃でした。


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