24 自由詩



 鎧戸から差す月の清光はしろく


 ぼくらの瞼をちろちろと舐めるから、


 夜の世界にぼくらは放り出された


 夜の満つるとき世界に寄る辺はひとりとてなく、


 道にうつる影はぼくらの倍ほどにも長くゆらめき、


 その姿はぼくらとは似つかないかたちをしており、


 こだまする足おとは不安におののいて、でも


 どこか耳になつかしく、


 なぜかなつかしく、


 だれかの鼓動と響きあうようでぼくらは


 立ちどまることができない


 罪をかくしもった、


 夜の女王のほほえみ


 深まる孤独




晩秋は空が明けるのとともに目を覚ますとちょうどいいものですから、寝室の鎧戸(っぽいブラインドカーテン)をすこし開けて眠ることにしています。すると日によっては月の光がまともに顔に当って、真夜中に目が覚めてしまうことがあります。

角度を工夫するなどすればきっとこんな不都合は避けられるんでしょうけど無頓着なもので、それに生来寝つきもいいため大抵は問題ないのです。


ところがこの夜は睡りのリズムが狂ったのかなかなか二度目の眠りに入ることができず、しかたないから詩でもつくるか――とベッドのなかでつくったのが上の詩です。……いえ、正確にいうと、次の日の朝、ほとんど忘れてしまっていた言葉たちの記憶を掘り返し・思いだし・ひねり出ししながらつくり直したものです。眠りをひとつ間にはさむと、記憶というのはこんなにも頼りなくなるんだなあ、とおもい知りました。

ベッドのなかではいい詩ができたなんて満悦でいましたがそれを再現することは叶わず、そもそも半分夢のなかにいたからこその錯覚かも知れず、今となっては、目覚めてから頭のなかをさらえてつくったこの詩で満足するしかありません。


ともかく、その夜は、世界じゅうで私ひとりが目覚めているような孤独を感じたのでした。そんな夜に私を心強くしてくれた足音とは、なんだったんでしょうね。


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