21 漢詩



 秋霖霽漁父垂索

 釣竿飄揚蒼穹高

 海靄乎絲竹不鳴

 浜鳥啼且海濤騒


<読み>

秋霖はれ、漁父はいとを垂る

釣竿ちょうかんひょうとして揚がり蒼穹高し

海は靄乎あいことして絲竹は鳴らざるも

浜に鳥は啼き、海になみ騒ぐ


<現代語訳>

秋の長雨が上がって空は晴れ、釣り人が糸を垂らしている。

気ままに釣り竿の上下する空は高い。

おだやかな海に管弦の音は鳴らない。が、

浜では海鳥が鳴いて、海からは浪の寄せる音が聞こえる。




「絲竹」は「絲」が弦楽器、「竹」が管楽器を指して「管弦」と同義。釣り糸と釣り竿(今はたいていカーボンかグラスファイバー製ですが)からの連想です。こういう理屈っぽいところは漢詩らしいかな、と。和歌だと、あんまり理屈に傾くのは興を削ぐような気がします。(代わりに、枕詞・序詞・掛詞などのかろやかな言葉遊びが満載)

「霖」は長雨。秋霖のほか、春霖、梅霖などの語もあります。

「靄・藹」はおだやか・なごやかという意味をもちます。「和気々」と書くのが一般的ですが、「和気々」と書くことも可(のはず)。ここでは海との縁から「靄」の方を採りました。海面にうっすら朝靄がたなびく情景が見えてくるかもしれませんね。


秋晴れの休日には岸壁に、家族連れや友人同士で釣りに興じる姿が見られます。本格派なのか孤高の釣り人なのか、なかにはテトラポットの上から釣り糸を垂れる人も。(もしかしたら禁じられているのかもしれませんが……)

そんな、行楽日和の一シーンでした。


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