17 短歌



 春されば花も咲くらむ秋されば葉も黄づくらむ帰らじの里



<読み>

はるされば はなもさくらむ あきされば はもきづくらむ かへらじのさと




「春されば」は、文法に従えば「春になったので」となりますが、昔の歌を見ていると、「春になったら」と読んで差し支えなさそうな例もちらほら。わりと緩めな順接の接続用法なのかもしれません。ここでも、「春になったら花も咲くだろう」ぐらいの意味で使っています。


「もみじ」というと現代では「紅葉」ですが、万葉の頃は「黄葉」と当てるのが普通でした。そう思って山をあらためて見ると、たしかに黄色く色づく葉も多い。平安京にうつったあと、楓のあの燃えるような紅葉を見慣れるようになって、「紅」が定着したのかもしれませんね。(個人的な想像で、裏どりしていません)

それほどに楓の紅は、印象を植えつける力がありますよね。


春秋の里の姿に郷愁の想いを詠いながらも、「帰るまい」と最後に言う背景には何があるのか――そんな想像を膨らませていただけましたら。


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